便秘について

あずかん

日勤で走り回り、やっと落ち着いたと思ったら夜勤帯で不穏祭り……そんな経験、誰にでもありますよね。その不穏の原因、実は「便秘」だったというケース、山ほど見てきませんでしたか?

たかが便秘、されど便秘です。臨床において便秘は、単なる排便トラブルではありません。高齢者のせん妄のトリガーになり、呼吸状態を悪化させ(腹部膨満による横隔膜挙上)、最悪の場合は糞便性イレウスや宿便性大腸穿孔といった致死的な合併症を引き起こす「静かなる脅威」です。

「3日出てないから下剤入れましょう」と安易に医師へ提案する前に、そのお腹の中で何が起きているのか、病態生理に基づいたアセスメントができていますか?
今回は、漫然とした下剤投与で終わらせない、排便管理について解説します。


目次

【保存版】原因を突き止める観察項目&根拠

観察項目観察ポイント根拠・予測
腸蠕動音(Bowel Sounds)の質と聴取位置聴診器を腹壁に当て、「音の質」を聞き分ける。

・金属音が聞こえないか
・完全な消失ではないか必ず触診・打診の前に行うこと。
金属音は機械的イレウス(閉塞)を示唆し、蠕動亢進期にある証拠です。逆に完全消失は麻痺性イレウスの可能性があります。
触診刺激で蠕動が変化するため、聴診を最初に行うのが鉄則です。この音の鑑別なしに刺激性下剤を使うのは、閉塞した腸管を無理に動かすことになり、穿孔リスクを高めます。
腹部触診・打診によるガスの分布と便塊の触知左下腹部(S状結腸)を中心に、手掌全体で深部を触知する。

・硬いソーセージ様の腫瘤を触れる
・打診で鼓音か濁音かを確認する。
S状結腸は便が貯留しやすい好発部位です。ここで硬い便塊を触れるなら直腸性・S状結腸性便秘(排便困難型)を疑います。
鼓音ならガス貯留(鼓腸)、濁音なら便塊や腹水を疑います。ガス貯留が著明なら、下剤よりもガス抜き(肛門管)や腹部温罨法が優先される場合があります。
便性状のパラドックス(溢流性下痢)「下痢をしているから便秘ではない」と即断せず、少量の水様便や泥状便が頻回に出ていないかを確認する。
直腸指診で直腸内の便塊有無を確認する。
これが最大の落とし穴です。直腸に巨大な硬い便塊が詰まり、その隙間から液状の便だけが漏れ出ている状態を「溢流性便秘/下痢」と呼びます。
ここで下痢止めを使ってしまうと、閉塞を助長し、病態を劇的に悪化させます。この場合、必要なのは摘便や浣腸です。
薬剤性便秘のリスク評価処方歴を確認し、以下の薬剤が開始・増量されていないかチェックする。

・オピオイド(麻薬)
・抗コリン薬(抗精神病薬、頻尿治療薬など)
・Ca拮抗薬(降圧薬)
オピオイドは腸管のオピオイド受容体に作用し、蠕動運動を強力に抑制します(痙攣性便秘に近い状態)。Ca拮抗薬も平滑筋収縮を抑制するため便秘を誘発します。
これらが原因の場合、浸透圧性下剤(酸化マグネシウム等)だけでなく、末梢性オピオイド受容体拮抗薬(ナルデメジン等)や刺激性下剤の併用を医師へ提案する根拠になります。
自律神経症状と全身状態排便時の血圧低下、徐脈、冷汗の有無。
または、原因不明の不穏、食欲不振、嘔気がないか。
排便時のいきみ(怒責)は迷走神経反射を引き起こし、失神や徐脈を招きます(ショック)。
また、高齢者において「なんとなく落ち着かない(不穏)」は、便秘による腹部不快感が主訴であるケースが非常に多いです。向精神薬を使う前に、排便コントロールで不穏が消失することも珍しくありません。

現場で役立つ+αの看護ポイント

「摘便」の前のひと工夫

直腸に便塊がある場合、いきなり指で掻き出すのは患者さんにとって苦痛ですし、迷走神経反射のリスクも高まります。
可能な限り、事前にグリセリン浣腸やオリーブオイルを少量注入し、便を軟化・滑走しやすくしてから実施してください。キシロカインゼリーの使用も疼痛緩和に必須です。

胃結腸反射(Gastrocolic reflex)を利用したトイレ誘導

排便のゴールデンタイムは「朝食後」です。食事によって胃が伸展されると、反射的に大腸の蠕動運動が亢進します。
漫然と日中にトイレ誘導するのではなく、朝食後30分以内を狙ってポータブルトイレに座ってもらう、あるいは坐薬を使用することで、生理的な排便リズムを取り戻しやすくなります。

下剤の使い分け(酸化マグネシウムの注意点)

高齢者に多用される酸化マグネシウム(カマ)ですが、腎機能低下がある患者さんでは「高マグネシウム血症」のリスクがあります。
徐脈や意識障害が出現した際は、便秘薬の副作用も疑ってください。腎機能が悪い場合は、新しい浸透圧下剤(PEG製剤やルビプロストンなど)への変更を提案する視点を持ちましょう。

参考資料
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