気管支喘息の病態生理から看護のポイントまで徹底解説!
あずかん気管支喘息は、呼吸器疾患の中でも特に患者数が多く、入退院を繰り返すケースも少なくないため、看護師として働く上で正しい知識を持つことが不可欠です。
この記事では、気管支喘息の基本的な知識から、実践的な看護のポイントまでを分かりやすく解説します。
気管支喘息とは
気管支喘息は、気道に慢性的な炎症が起こることで、様々な刺激に対して気道が過敏に反応し、発作的に気道が狭くなる(気道狭窄)ことを繰り返す疾患です。
この複雑な病態は、主に以下の3つの要素によって引き起こされます。
気道の慢性的な炎症
好酸球やマスト細胞などの炎症細胞が気道に集まり、慢性的な炎症を引き起こします。これが喘息の基本的な病態であり、様々な症状の根源となります。
気道過敏性の亢進
慢性的な炎症により、気道の粘膜がむくみ(浮腫)、ただれた状態になります。これにより、通常では反応しないようなわずかな刺激(アレルゲン、冷たい空気、タバコの煙など)に対しても、気道が過敏に反応しやすくなります。
可逆性の気道狭窄
気道過敏性が亢進した状態で刺激を受けると、気道を囲む平滑筋が収縮し、気道が狭くなります(気管支攣縮)。また、粘液(痰)の分泌も亢進し、気道をさらに狭窄させます。これにより、息苦しさや喘鳴といった喘息発作の症状が出現します。この気道狭窄は、適切な治療によって改善する「可逆性」が特徴です。
長期間、気道の炎症が続くと、気道壁が厚く硬くなる「リモデリング」が起こり、気道狭窄が元に戻りにくくなる(非可逆的になる)ことがあるため、早期から適切な治療を継続することが重要です。
気管支喘息の原因
気管支喘息の発症には、アレルギーが関与する「アトピー型」と、アレルギー以外の要因が関与する「非アトピー型」があります。
- アトピー型喘息
特定の抗原(アレルゲン)に対するIgE抗体が関与するタイプです。小児喘息の約9割、成人喘息の約6割がこのタイプと言われています。- 主なアレルゲン
- ハウスダスト: ダニの死骸やフン、ペットの毛やフケ、カビなど
- 花粉: スギ、ヒノキ、ブタクサなど
- 食物: 卵、牛乳、小麦、そば、ピーナッツなど(主に乳幼児期)
- 主なアレルゲン
- 非アトピー型喘息
アレルゲンが特定できないタイプで、成人で発症する場合に多く見られます。- 主な誘因(増悪因子)
- ウイルスや細菌による呼吸器感染症(風邪など)
- タバコの煙(受動喫煙を含む)
- 大気汚染(PM2.5など)
- 運動(運動誘発喘息)
- 気象の変化(気温、湿度、気圧の変化)
- ストレス、過労
- 薬剤(非ステロイド性抗炎症薬:NSAIDsなど)
- 主な誘因(増悪因子)
これらの要因は、喘息発作を誘発する「増悪因子」としても作用します。患者一人ひとり、原因や増悪因子が異なるため、個別の生活背景をアセスメントすることが重要です。
気管支喘息の症状
気管支喘息の症状は、発作時に現れる特徴的なものと、発作がない時にも見られるものがあります。
- 喘息発作時の主な症状
- 喘鳴
呼吸時に「ヒューヒュー」「ゼーゼー」という音が聞こえます。これは、狭くなった気道を空気が通る際に生じる音で、特に息を吐く時(呼気時)に聴取されやすいのが特徴です。 - 呼吸困難
息苦しさを感じ、特に「息が吐き出せない」という感覚(呼気性呼吸困難)が強くなります。重症になると、肩で息をする「起座呼吸」や、爪や唇が紫色になる「チアノーゼ」が見られることもあります。 - 咳・痰
発作時には激しい咳が出ます。痰は粘り気が強く、出しにくいことが多いです。
- 喘鳴
- 発作がない時(寛解期)の症状
発作がない時でも、気道の炎症は続いています。そのため、軽い咳や痰、のどの違和感などが続くことがあります。夜間や早朝に症状が出やすいのも特徴です。
発作の重症度は、軽症から生命を脅かす重篤なものまで様々です。意識レベルの低下や、喘鳴が逆に聞こえなくなる「サイレントチェスト」は、気道が完全に閉塞しかかっている危険なサインであり、緊急の対応が必要です。
治療・対症療法
気管支喘息の治療目標は、「健康な人と変わらない生活を送ること」です。そのために、発作を予防する長期管理と、発作時に症状を和らげる対症療法を組み合わせて行います。
- 長期管理薬(コントローラー)
喘息の根源である気道の炎症を抑え、発作を予防するために、定期的・継続的に使用する薬剤です。- 吸入ステロイド薬(ICS)
治療の第一選択薬です。気道の炎症を強力に抑える作用があります。吸入薬なので、全身への副作用が少ないのが特徴です。 - 長時間作用性β2刺激薬(LABA)
気管支を長時間拡張させる薬です。単独では使用せず、必ず吸入ステロイド薬と併用します。(配合剤が多い) - ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)
アレルギー反応に関わる物質の働きを抑える飲み薬です。特に鼻炎を合併している場合に効果的です。 - 抗IgE抗体薬など(生物学的製剤)
重症の喘息で、従来の治療ではコントロールが難しい場合に使用される注射薬です。
- 吸入ステロイド薬(ICS)
- 発作治療薬(レリーバー)
発作が起きた時に、狭くなった気道を速やかに広げて症状を和らげるために、頓服で使用する薬剤です。- 短時間作用性β2刺激薬(SABA)
気管支平滑筋に直接作用し、速やかに気管支を拡張させます。発作時にのみ使用します。乱用すると心臓に負担がかかったり、重篤な発作を引き起こすリスクがあるため、適正な使用が重要です。
- 短時間作用性β2刺激薬(SABA)
- 対症療法(発作時)
薬物療法に加え、以下のような対症療法を行います。- 酸素療法
SpO2(経皮的動脈血酸素飽和度)が低下している場合に、医師の指示に基づき酸素を投与します。 - 体位の工夫
起座呼吸や半坐位(ファウラー位)をとることで、横隔膜が下がり、呼吸が楽になります。
- 酸素療法
看護のポイント
急性期(発作時)の看護
迅速なアセスメントと緊急対応
バイタルサイン(特に呼吸回数、SpO2)、呼吸音、喘鳴の程度、意識レベル、チアノーゼの有無などを迅速に評価します。重症度を判断し、緊急性が高い場合は直ちに医師へ報告し、救命処置の準備をします。
安楽な体位の確保と環境調整
患者が最も楽な体位(起座呼吸、ファウラー位)をとれるように介助します。衣服を緩め、不安を増強させないよう、静かで安心できる環境を整えます。
確実な薬剤の投与と効果の確認
医師の指示に基づき、吸入薬や点滴などを正確に投与します。投与後は、呼吸状態や自覚症状が改善したかを経時的に評価します。
精神的支援
呼吸困難は強い不安と恐怖を伴います。患者のそばに寄り添い、落ち着いた態度で声をかけ、安心感を与えることが重要です。「大丈夫ですよ」「ゆっくり息を吐きましょう」といった具体的な声かけが効果的です。
慢性期(安定期)の看護
セルフマネジメント支援
喘息は自己管理が非常に重要な疾患です。患者自身が病気を理解し、治療を継続できるよう支援します。
吸入指導
吸入薬は正しく吸えなければ効果がありません。吸入手技を確認し、できていない場合は繰り返し指導します(デモ器の使用など)。うがいの必要性も説明します(口腔カンジダ症予防のため)。
服薬アドヒアランスの向上
薬剤の役割や副作用について丁寧に説明し、治療を継続する重要性を患者が理解できるよう支援します。
ピークフローメーターの指導
呼吸機能の客観的な指標であるピークフロー値を毎日測定し記録することで、発作の予兆を早期に察知し、対処できるよう指導します。
増悪因子の除去・回避に関する指導
アセスメントに基づき、個々の患者の増悪因子を特定し、具体的な除去・回避方法を一緒に考えます。
アレルゲン対策
こまめな掃除、寝具の工夫(防ダニシーツの使用など)、ペットとの関わり方などについて指導します。
生活習慣の改善
禁煙指導、感染予防(手洗い、うがい、ワクチン接種)、ストレス管理の方法などについて助言します。