腸閉塞について

腸閉塞とイレウスの違い|原因から看護のポイントまで徹底解説!

あずかん

消化器外科などで勤務していると、「腸閉塞」や「イレウス」という言葉を頻繁に耳にするのではないでしょうか。どちらも腸管内容の通過障害を指す言葉ですが、その病態は明確に異なります。しかし、臨床現場ではしばしば同義語のように扱われることもあり、混乱してしまう方もいるかもしれません。
この記事では、「腸閉塞」と「イレウス」の違いを明確にしながら、それぞれの病態生理、原因、症状、治療、そして最も重要な看護のポイントについて、分かりやすく解説していきます。


目次

腸閉塞とイレウスの根本的な違い

まず、「腸閉塞」と「イレウス」の最も大きな違いを理解しましょう。

腸閉塞
機械的イレウスとも呼ばれます。
腸管が物理的に「塞がって」しまう状態です。腫瘍、ヘルニア(脱腸)、癒着(手術後の傷跡など)、異物の誤飲など、物理的な原因によって腸管の内腔が狭くなったり、完全に閉塞したりします。
例えるなら、水道管がゴミで詰まっている状態です。

イレウス
機能的イレウスとも呼ばれます。
腸管の動き(蠕動運動)が悪くなる、または停止してしまう状態です。腸管自体に物理的な閉塞はありません。
腹部の手術後や、薬剤の副作用、電解質異常などが原因で起こります。
例えるなら、水道管は詰まっていないけれど、水を送るポンプが止まっている状態です。

臨床現場では、これら二つを総称して「イレウス」と呼ぶこともありますが、原因と病態が全く異なるため、治療方針も大きく変わってきます。この違いを理解することが、適切な看護の第一歩です。


腸閉塞・イレウスの原因

腸閉塞(機械的イレウス)の原因

物理的に腸管を塞いでしまう原因には、以下のようなものがあります。

  • 単純性腸閉塞(血行障害を伴わない)
    • 癒着:最も多い原因。開腹手術後に、腸管同士や腹壁がくっついてしまうことで腸の通り道が狭くなります。
    • 腫瘍:大腸がんや小腸腫瘍などが大きくなることで腸管を内側から塞ぎます。
    • 異物・糞便・胆石:誤飲した異物や硬くなった便、胆嚢から落ちた大きな胆石などが詰まることがあります。
  • 複雑性腸閉塞(血行障害を伴う)
    • 絞扼:腸管が索状物に締め付けられたり、腸重積、ヘルニア嵌頓(脱腸した部分が戻らなくなり締め付けられる)などによって、腸管への血流が途絶えてしまう状態です。緊急手術が必要になる危険な状態です。

イレウス(機能的イレウス)の原因

腸管の運動機能が低下する原因には、以下のようなものがあります。

  • 麻痺性イレウス
    • 開腹手術後:腹部を手術すると、一時的に腸管の動きが止まります(術後イレウス)。通常は数日で回復します。
    • 腹膜炎:腹腔内の炎症が腸管に波及し、動きを麻痺させます。
    • 電解質異常:特に低カリウム血症は、腸管の筋肉の動きを鈍らせます。
    • 薬剤の副作用:抗コリン薬、オピオイド系鎮痛薬などは、腸管の動きを抑制する作用があります。
  • 痙攣性イレウス
    • 中毒性物質などにより、腸管の一部が痙攣してしまい、内容物の通過が妨げられる稀な状態です。

症状

腸閉塞とイレウスの症状は似ていますが、病態を反映した特徴があります。

症状腸閉塞(機械的)イレウス(機能的)
腹痛間欠的で強い疝痛発作(腸が無理に動こうとするため)
– 複雑性の場合は持続的な激痛
持続的で全体的な鈍い痛み(腸が動かないため)
嘔吐– 閉塞部位が口側に近いほど早期に出現
– 当初は胃液、後に胆汁様、最終的には糞便様になることも
– 腹部膨満に伴い、後期に出現
腹部膨満– 閉塞部位より口側の腸管にガスや消化液が溜まる– 腸管全体の動きが悪いため、お腹全体が張る
排便・排ガスの停止– 完全閉塞の場合は停止する
– 不完全閉塞の場合はみられることもある
– 腸が動かないため停止する
腸蠕動音金属音(Metallic Sound):亢進した蠕動音が狭窄部を通過する音
– 複雑性で腸管壊死に陥ると減弱・消失
減弱または消失

腹痛の性状(間欠的か持続的か)や腸蠕動音(亢進しているか消失しているか)は、腸閉塞とイレウスを鑑別する上で非常に重要な情報です。聴診所見を正確にアセスメントし、記録しましょう。
特に、持続的な激痛や腹膜刺激症状(反跳痛、筋性防御)が出現した場合は、腸管壊死を伴う複雑性腸閉塞の可能性があり、緊急事態です。速やかに医師に報告が必要です。


治療・対症療法

腸閉塞(機械的イレウス)の治療

  • 保存的治療
    • 単純性腸閉塞で、閉塞が軽度の場合に行われます。
    • 絶飲食:腸管を安静に保ちます。
    • 輸液:脱水や電解質異常を補正します。
    • イレウス管(経鼻胃管・ロングチューブ)の挿入:鼻から小腸まで長い管を挿入し、溜まった消化液やガスを体外に排出(減圧)します。これにより腸管のむくみが取れ、閉塞が解除されることを期待します。
  • 外科的治療
    • 保存的治療で改善しない場合や、複雑性腸閉塞(絞扼性)が疑われる場合に行われます。
    • 原因となっている癒着を剥がしたり(癒着剥離術)、腫瘍を切除したり、壊死した腸管を切除したりします。緊急手術となることが多いです。

イレウス(機能的イレウス)の治療

  • 原因疾患の治療が基本となります。
    • 腹膜炎の治療、電解質異常の補正、原因となっている薬剤の中止など。
    • 術後イレウスの場合は、早期離床を促し、腸管の動きを活発にします。
  • 薬物療法
    • 腸管蠕動運動を促進する薬剤(プロスタグランジン製剤など)を使用することがあります。
  • 対症療法
    • 症状が強い場合は、絶飲食や輸液、胃管による減圧など、腸閉塞の保存的治療と同様の処置が行われることもあります。

看護のポイント

腸閉塞・イレウス患者の看護は、全身状態の管理から精神的なケアまで多岐にわたります。

バイタルサインと全身状態の観察

  • 腹部症状の観察
    腹痛の部位、程度、性状、腹部膨満の程度、腸蠕動音、圧痛・反跳痛の有無を継続的に観察します。症状の変化は病状の変化を示唆するため、経時的な記録が重要です。特に、疝痛発作から持続痛への変化、腹膜刺激症状の出現は絞扼性への移行を示唆する危険なサインです。
  • 脱水の評価
    尿量、血圧、脈拍、口渇、皮膚のツルゴールなどを観察し、IN-OUTバランスを正確に把握します。嘔吐やイレウス管からの排液が多い場合は、容易に脱水や電解質異常に陥ります。

イレウス管(胃管・ロングチューブ)の管理

  • 確実な固定と排液管理
    チューブの自己抜去は誤嚥や治療遅延のリスクがあるため、鼻翼や頬に確実に固定します。排液の量、性状(胃液→胆汁様→糞便様など)を時間ごとに記録し、色の変化は医師に報告します。
  • チューブの閉塞予防
    定期的にチューブ内を生理食塩水などでフラッシュし、閉塞を防ぎます(医師の指示を確認)。
  • 口腔ケア・鼻腔ケア
    絶飲食となり、チューブが挿入されている患者は、口腔内や鼻腔の不快感が非常に強いです。丁寧なケアで感染を予防し、安楽を確保します。

安楽の確保と精神的支援

  • 疼痛コントロール
    医師の指示に基づき、鎮痛薬を適切に使用します。ただし、オピオイド系鎮痛薬は腸管運動を抑制するため、使用には注意が必要です。安楽な体位の工夫(側臥位など)も行います。
  • 不安の傾聴
    絶飲食やイレウス管による苦痛、手術への不安など、患者は強いストレスを感じています。患者の言葉に耳を傾け、不安を傾聴し、治療の見通しなどを分かりやすく説明することで、精神的な安定を図ります。

栄養管理

  • 保存的治療中は絶飲食となるため、中心静脈栄養(IVH/TPN)で栄養管理が行われます。感染兆候(発熱、穿刺部の発赤・腫脹・疼痛)に注意し、血糖値の変動にも注意が必要です。
  • 経口摂取が再開される際は、誤嚥に注意し、少量から開始します。腹部症状の再燃がないか慎重に観察します。

術後看護(外科的治療の場合)

  • 開腹手術後の看護に準じます。創部管理、ドレーン管理、疼痛管理、早期離床の促進などが重要になります。

参考資料
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