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聞いたことあるけど、よく知らない  「ボツリヌス菌」食中毒

 

2025年2月、新潟県にて50代女性が「ボツリヌス菌」を原因とした食中毒により、全身麻痺・人工呼吸器の装着が必要となったと、ニュースがありました。

食中毒といえば、発生順にいうと、アニサキス、カンピロバクター、ノロウイルスとなっており、ボツリヌス菌に関しては順位に入らないほどです。

ですがとても毒性が強く、大きくニュースになった事例を振り返ると、1984年の熊本県で製造された「からし蓮根」を食し、患者数38人のうち11人が死亡する食中毒事故があがります。この食中毒では、お土産用の商品だったため、被害は13都県と広範囲にわたりました。

今回は、そんな「ボツリヌス菌」を紹介していきます。

 

「ボツリヌス菌」ってなに?

ボツリヌス菌とは、土の中など自然界に広く生息し、運動神経を麻痺させる毒素を産出します。

神経毒素は80℃以上30分以上、または100℃数分以上の加熱で、神経毒素の機能や活動が弱まったりしますが、ボツリヌス菌自体は熱に強い芽胞を形成し、通常の加熱では死滅しません。

嫌気性(酸素を必要としない、または酸素の存在下では生育できない)のため、缶詰やレトルトパック、真空包装などの酸素のない環境で増殖します。

 

どうして食中毒になるの?

通常販売されている缶詰やレトルトパックなどの商品は、詰められる前の加熱・加圧殺菌食品内をボツリヌス菌が増殖できない環境にする加熱後の食品を急冷・低温保存するなどの対策を行うことで、食中毒の予防に努めています。

しかし、自宅で大量に購入した食品を自身で小分けにするなど、菌が混入する環境が生まれます。小分け後に冷凍保存などの正しい保存方法を行えば、菌の増殖することは少ないと考えられますが、もし保存方法が間違えており、気づかずに食べてしまうと食中毒になる可能性が高くなってしまいます。

また、子育て中の方は聞いたことがあると思いますが、1歳未満の乳児に蜂蜜を与えてはいけません。なぜなら、蜂蜜の内部は無酸素状態になりやすく、一般的に包装前に加熱処理を行わないため、ボツリヌス菌が混入することがあります。そのため、1歳未満の乳児が蜂蜜を食べてしまうと、幼児ボツリヌス症を発症する恐れがあります。

ちなみに、ボツリヌス菌芽胞が入った蜂蜜を健康な成人が食べても、腸内で増殖することはなく、腸内細菌との競争に負けてしまいます。そのため、蜂蜜からボツリヌス菌芽胞が認められても、その蜂蜜を市場から回収されることはないのです。

 

「ボツリヌス菌」食中毒ってどんな症状?

潜伏期間は、食後8~36時間で、脱力感、頭痛、めまい、言語障害、嚥下障害、呼吸困難などがあります。重症の場合、呼吸麻痺により死亡の恐れがあります。

また、乳児ボツリヌス症での症状は、数日の便秘、全身の筋力低下、脱力状態、哺乳力の低下、泣き声が小さくなるなどがあります。特に、顔面は無表情となり、頸部筋肉の弛緩により頭部を支えられなくなります。ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることがあるため、絶対に1歳未満の乳児に蜂蜜を与えないでください。

 

 

「ボツリヌス菌」は自然界によくある菌です。今回の食中毒の原因は、要冷蔵の食品を常温保存しており、それを誤って食べたことで起こってしまいました。食品を保存する際には、保存条件をしっかり確認し、少しでも異変を感じたら食べないように注意してください。