自己血管内シャントについて

自己血管内シャント(AVF)について|知っておくべき管理と観察ポイント

あずかん

透析患者を受け持つ際、必ず遭遇するのが「バスキュラーアクセス(VA)」です。その中でも最も一般的で推奨されているのが自己血管内シャント(AVF:Arteriovenous Fistula)です。
この記事では、AVFの基礎知識から日々の観察、トラブル対応、患者指導まで、知っておくべきポイントを徹底解説します。

目次

なぜ「動脈」と「静脈」をつなぐのか

通常、血液透析では1分間に約200mL〜300mLという大量の血液を体外へ導き出し、浄化して体内に戻す必要があります。しかし、通常の末梢静脈ではこれだけの血流量を確保できず、また頻回の穿刺にも耐えられません。そこで、以下の生理学的変化を人工的に作り出します。

1.吻合
手首などの末梢で、動脈(主に橈骨動脈)と静脈(主に橈側皮静脈)を外科的に直接つなぎ合わせます。
2.動脈圧の伝播
吻合部を通じて、高い圧力を持つ動脈血が直接静脈へ流れ込みます。
3.静脈の動脈化
大量の血流と高い圧力がかかることで、静脈壁が肥厚し、太く発達します。これを「静脈の動脈化(成熟)」と呼びます。

結果: 太くて丈夫、かつ大量の血流が流れる血管が完成し、安定した透析が可能になります。

シャントはいつ、なぜ作られるのか

AVFは自然発生するものではなく、末期腎不全(ESKD)の治療のために意図的に作成されます。

  • 主な適応疾患
    • 糖尿病性腎症
    • 慢性糸球体腎炎
    • 腎硬化症
    • 多発性嚢胞腎 などによる末期腎不全
  • 作成のタイミング
    • 透析導入が見込まれる数ヶ月前(静脈が成熟するまでに2週間〜数ヶ月かかるため、早期の作成が推奨されます)。
  • AVFが第一選択となる理由
    • 人工血管(AVG)やカテーテルに比べ、感染リスクが低い
    • 開存率(長持ちする確率)が高い
    • 自己血管であるため、生体適合性が高い。

シャントの正常と異常の見分け方

看護師にとって最も重要なのは、この「作られた血管」が正常に機能しているかを見極めることです。

正常なAVFの所見

  • 視診: 血管の走行が明瞭で、瘤や発赤がない。
  • 触診(スリル): 吻合部や血管上で「ザーザー」「ビリビリ」という振動(スリル)を触れる
  • 聴診(シャント音): 聴診器で「ゴーゴー」「ザーザー」という連続性雑音が聴こえる(低調で持続的)。

異常なAVFの所見(トラブルのサイン)

  • 狭窄
    • 音の変化: 音が高くなる(「ヒューヒュー」「キーン」という高調音)。音が短くなる(断続音)。
    • スリルの変化: スリルが弱くなる、あるいは拍動(ドクンドクン)に変わる。
  • 閉塞
    • 音・スリルの消失: まったく聴こえない、触れない。血管が硬く触れる(血栓形成)。
  • 感染
    • 穿刺部や吻合部の発赤、腫脹、熱感、排膿、疼痛。
  • スチール症候群
    • 手指の冷感、チアノーゼ、疼痛、しびれ(動脈血がシャントに盗られ、末梢への血流が不足する)。
  • 静脈高血圧症
    • シャント側の腕や手の浮腫、腫脹(還流静脈の狭窄などで起こる)。

治療・対症療法

シャントトラブルが疑われた場合、早期発見・早期治療がシャントの寿命を延ばします。

狭窄・閉塞への対応

  • 経皮的血管形成術: バルーンカテーテルを用いて狭くなった血管を広げる治療。現在、第一選択となることが多いです。
  • 血栓除去術: 詰まった血栓を外科的またはカテーテルを用いて取り除きます。
  • 再建術: シャントを作り直します(より中枢側や反対側の腕など)。

感染への対応

  • 抗生剤投与: 細菌培養を行い、感受性のある抗生剤を使用します。
  • ドレナージ・抜去: 膿瘍形成がある場合や、人工血管感染の場合は外科的な処置が必要になることが多いです。

看護師ができる対症療法(医師の指示下)

  • 保温: 血管を拡張させ血流を保つため、シャント肢を冷やさないよう指導します(ただし、感染兆候がある場合の温罨法は禁忌)。
  • 挙上: 浮腫が強い場合は、心臓より高い位置に患肢を保ちます。

看護のポイント

毎日の観察(3点チェック)

勤務交代時や検温時に必ず以下の3点を確認します。

  • 聴く: シャント音は連続しているか? 高調音になっていないか?
  • 触る: スリル(振動)はあるか? 拍動に変わっていないか? 熱感はないか?
  • 見る: 発赤、腫脹、創部の異常はないか?

シャント肢の保護(禁忌事項の徹底)

シャントがある側の腕(シャント肢)では、血管を圧迫し、閉塞させるリスクがあるため以下の医療行為を行ってはいけません。

  • 血圧測定禁止
  • 採血・静脈ルート確保禁止(緊急時かつ他で確保できない場合を除くが、基本は避ける)
  • 腕時計・アクセサリー・きつい袖口の禁止
  • 重いものを持たない
  • 腕枕をしない(圧迫回避)

血圧低下時の対応

ショックや脱水などで全身の血圧が低下すると、シャント閉塞のリスクが急激に高まります。

  • 低血圧時は、シャント音が消失していないか頻回に確認する。
  • 脱水予防のため、適切な水分管理を行う(心不全とのバランスに注意)。

止血管理

透析後の止血バンドや穿刺後の圧迫は、強すぎると閉塞の原因になります。

  • 止血確認後は速やかに圧迫を解除するよう指導・確認する。

患者指導(セルフケア)

患者自身が「自分のシャントを守る」意識を持つことが大切です。

  • 毎日1回は自分で触ってスリルを確認する習慣をつけてもらう。
  • シャント肢を洗って清潔に保つよう指導する(感染予防)。
  • かゆくても搔きむしらない(かさぶたを無理に剥がさない)。
参考資料
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