突発性大腿骨頭壊死症(ONFH)について

突発性大腿骨頭壊死症(ONFH)について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

突発性大腿骨頭壊死(ONFH)が他の骨折と大きく違うのは、「働き盛りの30代〜50代に好発する」という点です。
「痛くてもう働けないかもしれない」「ステロイドを飲んでいたせいで…」といった、複雑な社会的・心理的背景を抱えているケースも少なくありません。
今回は、難病指定もされているこの疾患について、教科書的な知識だけでなく、現場で私たちがどう動けば患者さんのQOLを守れるのか、実践的な視点で深掘りしていきます。

目次

サクッと復習!疾患の概要

まずはクリニカルな視点で、医師のカルテを読み解くための基礎知識を整理しましょう。

  • 病態: 大腿骨頭への血流が何らかの原因で遮断され、骨組織が壊死(虚血性壊死)する疾患。壊死した骨がつぶれる「圧潰」が起きると激痛が生じます。
  • 原因
    • ステロイド性: SLE(全身性エリテマトーデス)などの治療でのステロイド大量投与歴。
    • アルコール性: 長期間の多量飲酒。
    • 特発性: 原因不明。
  • 症状: 突然発症する股関節痛が特徴ですが、大腿部前面、膝関節部、殿部への放散痛を訴えることも多いです。可動域制限(特に内旋・外転)も見られます。
  • 治療
    • 保存療法: 圧潰のリスクが低い場合。杖歩行、免荷、体重コントロール。
    • 手術療法
      • 骨切り術(CPO、TRO): 自分の骨を残す手術。若年者で壊死範囲が限定的な場合に適応。
      • 人工関節置換術(THA、BHA): 圧潰が進行し、変形性股関節症へ移行している場合などに適応。

観察ポイント&根拠

ONFHの患者さんは、手術適応か保存かを見極める時期や、術後の合併症リスク管理において、私たちの観察眼が問われます。
漫然と観察するのではなく、以下のポイントに絞ってアセスメントを行ってみてください。

観察項目観察ポイント根拠・予測
疼痛の質の変化「痛みの強さ(NRS)」だけでなく、「安静時痛か、荷重時痛か」を区別して聴取する。また、「カクン」というロッキング症状がないか確認する。安静時痛の出現やロッキング症状は、「骨頭の圧潰進行」や「関節軟骨の剥離」を示唆する危険なサインです。
急速なADL低下を予測し、転倒リスクを見直す必要があります。
可動域(ROM)特に股関節の屈曲・内旋角度をゴニオメーターで測定し、前回値と比較する。
(例:Patrickテストの実施)
ONFHでは初期から内旋制限が出やすいです。
術前であれば病期の進行予測に、術後(特に骨切り術)であれば「矯正角度の保持」ができているかの指標になります。
腓骨神経麻痺の兆候足趾(特に母趾)の背屈運動が可能か、足背の知覚鈍麻がないか、患者さんに動かしてもらい確認する。術中の牽引や、術後の良肢位保持(外転枕の使用など)による圧迫で腓骨神経麻痺を起こすリスクがあります。
早期発見できれば、圧迫解除などの対応で不可逆的な麻痺を防げます。
原疾患のコントロール(ステロイド性の場合)原疾患(SLEなど)の症状再燃がないか観察する。
発熱、皮疹、関節痛など全身症状をチェックする。
手術侵襲というストレスにより、コントロールされていた膠原病などが再燃するリスクがあります。
整形外科的な視点だけでなく、内科的な全身管理が予後を左右します。

もし患者さんが「仕事に戻れるか不安だ」と言ったら?

30代〜40代の働き盛りの患者さんが、ベッドサイドでふと漏らす言葉。
「この足じゃ、もう前のようには働けないかな…。家族もいるのに。」

言葉の裏にあるニード
この時、「リハビリ頑張れば大丈夫ですよ」という無責任な励ましはNGです。
この言葉の裏には、「社会的役割の喪失への恐怖」と「経済的な不安」が隠れています。

対応アクションと会話例

  1. 不安の言語化を促し、受容する(傾聴)
    • 「ご家族のことやお仕事のこと、焦る気持ちになりますよね。今は痛みもあって、余計にそう感じてしまう時期だと思います。(椅子に座り、目線を合わせて)具体的にどのような業務への復帰を心配されていますか?」
  2. 多職種連携への橋渡し(具体的解決策の提示)
    • 具体的な業務内容(立ち仕事、重量物運搬など)を聞き出した上で、
      「〇〇さんの今の足の状態だと、確かに以前と全く同じ動きは負担が大きいかもしれません。でも、主治医やリハビリスタッフと相談して、負担の少ない動き方を習得したり、職場への復帰プランを一緒に考えることはできます。また、必要であれば医療ソーシャルワーカー(MSW)に経済的な制度の相談を繋ぐこともできますよ。」
  3. 「できること」に焦点を当てる
    • 「まずはリハビリで、杖を使ってどのくらい歩けるようになるか、一つずつ確認していきましょう。」

現場で差がつく看護のコツ・ポイント

教科書通りのケアに「プラスα」を加えることで、患者さんの安楽と自立度が大きく変わります。

工夫・アイデア実践内容このケアによる効果・メリット
術後体位の微調整患肢の外転保持をする際、外転枕だけに頼らず、大転子部(外側)や仙骨部に除圧用の小さなクッションやタオルを挿入する。同一肢位による苦痛(腰痛など)を緩和できます。
また、腓骨神経麻痺の原因となる腓骨頭への圧迫を回避する微調整も可能です。
靴下着脱の自助具指導THA術後などの脱臼予防(過屈曲禁止)のため、ソックスエイド(自助具)の使用方法を早期からデモンストレーションする。「自分で靴下が履ける」という成功体験は、患者さんの自尊心を高めます。
また、無理な姿勢による脱臼事故を物理的に防ぐ最強の自助具です。
鎮痛薬の「先読み」投与リハビリ(PT)のお迎えが来る45分〜1時間前に、アセトアミノフェンやNSAIDsの内服を済ませておくよう調整する。リハビリ開始時に血中濃度がピークに達するため、動作時痛が軽減されます。
痛みが減ればリハビリ意欲が向上し、結果として早期離床・退院促進につながります。
禁酒指導への介入(アルコール性の場合)栄養士や医師と連携し、単に「止めてください」ではなく、「なぜ骨が壊死したのか」のメカニズムを図解で説明する。視覚的な理解は行動変容につながりやすいです。
反対側(健側)の骨頭壊死を防ぐためにも、生活習慣への介入は看護師の重要な役割です。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人の頃のよくある失敗、それは「膝の痛みを、膝関節の問題だと思い込んでしまったこと」です。

患者さんが「膝が痛い」と訴えたので、膝の熱感や腫脹ばかり一生懸命観察し、「異常なし」と判断してしまったことがあります。しかし、実際は大腿骨頭の圧潰が進んだことによる「関連痛」でした。
股関節の病変は、閉鎖神経を介して膝内側に痛みを飛ばすことがよくあります。


整形外科では、「患部そのものだけでなく、一つ隣の関節を見る」のが鉄則です。
股関節疾患なら「腰」と「膝」も必ずチェックしてください。

患者さんの訴えを鵜呑みにせず、「なぜ膝が痛いのか? もしかして股関節からのサイン?」と、解剖学的な地図を頭の中で広げるクセをつけると、アセスメントの質がグッと上がります。
難病指定の疾患だからこそ、患者さんの将来を見据えた、息の長い支援をしていきましょう。

参考資料
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
目次