末期腎不全について

末期腎不全について|疾患の概要から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

受け持ち患者さんのカルテを見ていて、eGFRの数値が1桁台に低下しているのを確認したり、足を指で押すと深い痕が残るほどの高度な浮腫を認める患者さんに出会ったことはありませんか?
腎機能が不可逆的に低下し、生命を維持する限界に近づいた病態が「末期腎不全(ESKD)」です。

末期腎不全の患者さんは、水分・電解質バランスの破綻による心不全や致死性不整脈、尿毒症による多彩な全身症状のリスクと隣り合わせで生活しています。また、血液透析(HD)、腹膜透析(PD)、腎移植といった「腎代替療法」の選択(療法選択)という、人生を左右する大きな意思決定に直面している時期でもあります。
今回は、単なるデータ管理にとどまらない、ベッドサイドで患者さんの生命と生活を守るためのベテランの視点を紹介しますね。


サクッと復習!末期腎不全の概要

  • 病態・原因
    慢性腎臓病(CKD)が進行し、腎機能が正常の15%未満にまで低下した状態(CKDステージG5)。
    原因疾患の第1位は糖尿病性腎症、第2位は慢性糸球体腎炎、第3位は高血圧による腎硬化症です。
  • 診断基準
    • 推算糸球体濾過量(eGFR)が15mL/min/1.73m2未満(ステージG5)。
    • 血清クレアチニン(Cr)および尿素窒素(BUN)の持続的高値。
    • 超音波検査による腎臓の萎縮(びまん性変化、皮質の菲薄化)の確認。
  • 症状(尿毒症症状)
    尿毒素の蓄積による悪心・嘔吐、食欲不振、皮膚掻痒感、尿毒症性脳症(意識障害、羽ばたき振戦)。水分の貯留による高血圧、肺水腫、高度の下肢浮腫。エリスロポエチン産生低下による腎性貧血。
  • 治療
    水分・塩分・カリウム・リンの厳格な食事療法に加え、カリウム吸着薬やリン吸着薬などの薬物療法。これらで代償できない場合は、生存維持のために血液透析(HD)、腹膜透析(PD)、または腎移植(RT)の導入が行われます。

目次

観察ポイント&根拠

観察項目具体的アクション(何をどう見るか)その根拠・アセスメント(なぜそこを見るか)
夜間の呼吸状態(仰臥位での呼吸苦、起坐呼吸の有無)検温時や夜間ラウンド時、患者さんが枕を高くして寝ていないか、平ら(仰臥位)に寝ると息苦しそう(呼吸回数20回/分以上、浅呼吸)にしていないかを確認し、両下肢の圧痕性浮腫の深度を評価する。【溢水による急性左心不全(肺水腫)の早期発見】
腎排泄機能の低下により、血管内に過剰な水分が貯留(溢水)します。仰向けになると静脈還流量が増加し、処理しきれない血液が肺にうっ滞して肺水腫(夜間起坐呼吸)を引き起こすため、速やかな酸素投与や透析による除水検討を必要とするサインです。
心電図モニターの波形変化(T波の先鋭化)血清カリウム(K)値が5.5mEq/Lを超えている患者さんにおいて、心電図モニター上で「T波がテント状に尖っている(テント状T波)」、あるいは「QRS幅が広がっている(QRS幅延長)」がないかを評価する。【高カリウム血症による致死性不整脈の予測】
カリウムの排泄障害が極限に達すると、心筋の興奮伝導が抑制されます。テント状T波は心室細動(Vf)や心静止に至る最初のサインであり、これを発見した瞬間にカルシウム製剤(カルチコールなど)の静注や緊急透析の準備に入る必要があります。
意識レベルと微細な不随意運動(羽ばたき振戦)挨拶時の反応スピードを確認し、「両腕を前にまっすぐ伸ばして、手首を反らせて(背屈)みてください」と指示し、手がパタパタと不規則に揺れる動作(羽ばたき振戦)が出現しないか視診する。【尿毒症性脳症への移行評価】
本来尿から排泄されるべき尿毒素(中分子物質など)が体内に蓄積し、中枢神経系を侵食しているサインです。単なる認知症の進行やせん妄と誤認されやすいですが、羽ばたき振戦は尿毒症が進行して昏睡に至る前兆であり、緊急で血液浄化(透析)を開始する指標になります。

もし患者さんがこう言ったら、あなたはどうする?

保存期から透析導入へと期が移る末期腎不全の患者さんから、「透析を始めたらもう普通の生活はできないんでしょ。仕事も辞めなきゃいけないし、もうおしまいだよね…」とベッドサイドでしばしば聞かれる非常に重い言葉です。

言葉の裏にある病態とニード
この言葉の裏には、透析治療に対する「人生の自由度を奪われる」という恐怖や、社会的役割の喪失に対する喪失感、そして情報不足による誤解が隠されています。患者さんは、医学的な説明(透析のスケジュールなど)ではなく、「透析をしながらでも、自分らしい生活を維持できるのか」という生活者としての安心感を求めています。

対応アクションと会話例

  • 対応例
    1. まずは「もうおしまいだ」という絶望的な感情を否定せずに、最後まで傾聴します。
    2. その上で、夜間透析(オーバーナイト透析)や在宅血液透析(HHD)、腹膜透析(PD)など、現在の治療選択肢が「仕事や生活を継続するための代償手段」であることを提示します。
    3. 同じ境遇で仕事を続けている他患者の事例(ピアサポート)の存在を伝え、意思決定支援を行う専門看護師やソーシャルワーカーとの面談をセッティングします。
  • 会話例
    「これから先の生活がどうなってしまうのか、本当に不安でいっぱいになりますよね。お仕事を続けたいというお気持ち、とても大切にしたいです。実は今、透析をしながらこれまで通りお仕事を続けていらっしゃる方はたくさんいます。お仕事を終えた夜間に受ける透析や、ご自宅で寝ている間に行う腹膜透析という方法もあります。〇〇さんのライフスタイルを崩さずに続けられる方法を、透析認定看護師やソーシャルワーカーと一緒に、1つずつ具体的に考えてみませんか?」

現場で差がつく看護のコツ

工夫・コツ・アイデア具体的な手技・環境調整期待される効果・メリット
尿毒症性の皮膚掻痒感に対する「ノンケミカルクール」と保湿の徹底乾燥を伴う激しい痒みに対し、抗ヒスタミン薬を安易に増やすのではなく、お湯の温度を「38〜39℃」に設定したシャワー浴とし、入浴後5分以内にヘパリン類似物質や白色ワセリンを摩擦を避けて優しく塗布する。痒みが強い局所には、冷水で湿らせたおしぼりを当てる。【皮膚バリアの保護と痒みスパイラルの抑制】
尿毒症による掻痒感は、皮膚への温熱刺激で増悪します。ぬるめのお湯で皮脂の流出を防ぎ、冷却と保湿を徹底することで、末梢神経の興奮を鎮め、掻破による皮膚感染症(蜂窩織炎など)や不眠を防ぎます。
「塩分1g」を視覚的に捉える減塩指導「1日塩分6g未満」と口頭で指導するのではなく、実際のスティックシュガー(3g入り)などを2本並べて見せ、「これがお塩だとしたら、1日に使える量はこれだけです。醤油差しはプッシュ式(1プッシュ0.1g)に変更しましょう」と指導する。【在宅での自己管理能力の向上】
抽象的な数値目標を具体的な「目に見える量・アクション」に落とし込むことで、高齢の患者さんでも食事摂取時の具体的なイメージが湧き、塩分過多による急激な血圧上昇や心不全増悪での緊急入院を防ぐことができます。

新人さんが陥りやすいミスへの対策

新人の頃って、末期腎不全の患者さんを受け持つと、血液検査の「Kが5.8だから生野菜は禁食!」「水分制限1日800mLだから、飲んだ量をきっちり測らなきゃ!」と、ルールを守らせるための“監視員”のようになってしまいがちですよね。患者さんがこっそりお茶を飲んでいるのを見つけて、つい「ダメじゃないですか!」と注意して気まずくなる……これは多くの人が経験する道です。

でも、考えてみてください。おしっこがほとんど出ない患者さんにとって、「喉の渇き」は生理的・根動的な、耐え難い苦痛です。そこをただ「我慢して」と力づくで制限するだけでは、患者さんは隠れて飲むしかなくなってしまいます。

アプローチは、ルールを押し付けることではありません。「なぜ喉が渇くのか(塩分が多いから血管内に水を引き込もうとしている)」を一緒に紐解き、氷を口に含んで冷感を得る工夫や、塩分を引いて自然と水が欲しくならない体作りを提案することです。

患者さんを「指導する対象」ではなく、「一緒に制限と戦うパートナー」として捉えられるようになると、あなたの関わりはもっと優しく、実効性のあるものに変わっていきますよ。


参考資料

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