手指切断(切断指)の看護|保存方法から術後管理まで徹底解説
あずかん手指切断(Amputation of finger)は、外傷により指の一部または全部が切り離された状態を指します。微小血管吻合による再接着術の成否は、受傷からの経過時間と「切断指の保存状態」に大きく左右されます。
この記事では、手指切断の知っておくべき病態生理、原因、治療、そして看護のポイントを詳しく解説します。
組織の虚血と再灌流障害
手指が切断されると、末梢組織への血流が途絶え、虚血状態に陥ります。
- 温阻血(Warm Ischemia)
常温下での虚血。組織の変性が早く進行します。再接着のタイムリミット(虚血許容時間)は一般的に6〜8時間以内とされています。 - 冷阻血(Cold Ischemia)
冷却下での虚血。代謝を抑制することで組織の生存時間を延長できます。適切に冷却保存されれば、12〜24時間程度まで許容時間が延びる可能性があります。
組織の耐久性
組織によって虚血への耐性は異なります。
- 皮膚・骨・腱: 比較的虚血に強い。
- 筋肉・神経: 虚血に弱く、不可逆的な変性を起こしやすい。
また、血流再開後に活性酸素などが発生し、組織障害が悪化する「再灌流障害」のリスクも考慮する必要があります。
手指切断の原因
主に労働災害や日常生活における外傷が原因となります。
- 切断(Guillotine type)
鋭利な刃物(包丁、裁断機など)によるスパッと切れた損傷。組織の挫滅が少なく、再接着の成績は比較的良好です。 - 圧挫(Crush type)
プレス機やドア挟み込みなどによる損傷。組織がつぶされており、血管や神経の損傷範囲が広く、再接着が困難な場合があります。 - 引き抜き(Avulsion type)
ロープや指輪などが引っかかり、組織が引きちぎられる損傷(デグロービング損傷など)。血管や神経が中枢側・末梢側ともに長く損傷されており、予後は不良な傾向にあります。
手指切断による症状
出血・ショック
動脈損傷による拍動性の出血。ただし、完全切断の場合は血管が攣縮し、意外に出血が少ないこともあります。
疼痛
激しい痛み。ただし、ショック状態や神経切断により一時的に痛みを感じない場合もあります。
機能喪失
運動・感覚機能の消失。
精神的動揺
身体の一部を失ったことによるパニック、不安、喪失感(ボディイメージの変容)。
治療・対症療法
治療の第一選択は、機能温存のための「再接着術」です。しかし、損傷が激しい場合や全身状態が悪い場合は、断端形成術が選択されます。
初期治療
- 止血: 切断端をガーゼで圧迫し、患手を挙上します。
- 注意: 根元での無闇な止血帯(輪ゴムなど)の使用は、神経麻痺や血管損傷を招くため、原則として圧迫止血を行います。
- 切断指の保存(最も重要)
- 切断指を生理食塩水で湿らせたガーゼで包む。
- ビニール袋に入れて密封する。
- 氷水(氷+水)を入れた容器の中に、袋ごと入れる。
- 禁忌: 切断指を直接氷に当てない(凍傷による組織壊死)、水に直接浸けない(浸透圧による組織浮腫)。
外科的治療
- 再接着術: 顕微鏡下で骨、腱、神経、動脈、静脈を縫合・吻合します。
- 断端形成術: 再接着が不可能な場合、骨を短縮し、皮膚で覆って縫合します。
薬物療法(術後)
- 抗凝固療法・抗血小板療法
- 吻合した血管の血栓閉塞を防ぐため、ヘパリン、プロスタグランジン製剤、ウロキナーゼなどが使用されます。
- 鎮痛薬・抗生剤
- 疼痛コントロールと感染予防。
看護のポイント
急性期・術前の看護
1.切断指の適切な管理
持参された切断指が正しく保存されているか直ちに確認します。「直接氷に入っている」場合はすぐに取り出し、正しい手順(ガーゼ→袋→氷水)で保存し直します。
2.全身状態の観察と精神的ケア
出血性ショックの有無を確認。
パニック状態の患者に対し、落ち着いた声かけを行い、不安の軽減に努めます。
3.術前準備
緊急手術(全身麻酔または伝達麻酔)に備え、最終飲食時間の確認、ルート確保、採血、X線撮影介助を行います。
術後の看護
再接着術後は、「血管が詰まらないか」の観察が最優先です。
1. 患指の観察(1〜2時間おき)
以下のサインが見られた場合は、直ちに医師へ報告します。
- 色調
- 蒼白(White): 動脈不全(血液が流れていない)。
- 暗紫・チアノーゼ(Purple): 静脈うっ滞(血液が戻っていない)。
- 皮膚温
- 健側と比較して冷感がないか(表面温度計を用いることが多い)。
- Capillary Refill(毛細血管再充満時間)
- 爪床を圧迫し、2秒以内に赤みが戻るか。延長時は動脈不全、即座に戻りすぎる場合は静脈うっ滞の可能性。
- turgor(皮膚の張り
- ぱんぱんに腫れていないか(うっ滞)。
2. 患部の安静・挙上
- 挙上
- 静脈還流を促し、浮腫を防ぐため、患手を心臓より高い位置に保ちます(枕やスリングを使用)。
- 安静
- 吻合部の緊張を避けるため、指示された期間は絶対安静・ギプス固定を守ります。
3. 全身管理・環境調整
- 室温管理
- 血管収縮(攣縮)を防ぐため、室温は高め(24〜26℃程度)に保ち、毛布などで保温します。
- 禁煙指導
- ニコチンによる血管収縮は吻合部の壊死に直結するため、本人および家族へ厳重な禁煙(受動喫煙含む)を指導します。
- 抗凝固療法の管理
- 出血傾向(歯肉出血、血尿など)に注意します。
4. 精神的サポート
- 指の短縮や機能障害が残る場合、機能回復への不安やボディイメージの変容に対する傾聴と受容が必要です。リハビリテーション期へのスムーズな移行を支援します。