肺炎について|病態生理から看護のポイントまで徹底解説
あずかん肺炎は、日常的に遭遇する頻度の高い疾患ですが、重症化すると致死的な経過をたどることもあり、適切な観察とケアが求められます。
この記事では、肺炎の押さえておくべき基礎知識から実践的な看護のポイントまでを詳しく解説します。
目次
肺の中で何が起きているのか
肺炎とは、細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に侵入し、肺の実質(肺胞領域)に急性の炎症が起きている状態です。
①炎症の発生
病原体が肺胞に到達すると、マクロファージや好中球などの免疫細胞が集まり、サイトカインを放出して炎症反応が起こります。
②滲出液の貯留
炎症により肺胞壁の毛細血管透過性が亢進し、肺胞内に滲出液(膿など)が溜まります。これを「コンソリデーション(肺硬化像)」と呼びます。
③ガス交換障害
肺胞が滲出液で満たされると酸素の取り込みができなくなり、換気血流不均衡(V/Qミスマッチ)が生じます。
重症化すると、肺胞虚脱やシャント(血液が酸素化されずに左心系へ戻る現象)が起き、低酸素血症(SpO2低下)を引き起こします。
どこで、何に感染したか
肺炎は、発症した場所や背景によって大きく3つに分類され、原因菌の傾向が異なります。
市中肺炎 (CAP)
健康な人が一般社会(病院外)で発症する肺炎です。
- 主な原因菌: 肺炎球菌(最多)、インフルエンザ桿菌、マイコプラズマ、クラミジアなど。
医療・介護関連肺炎 (NHCAP)
長期療養施設に入所中の方や、通院透析を受けている方など、医療・介護と接点がある高齢者に多い肺炎です。
- 主な原因菌: 肺炎球菌に加え、緑膿菌やMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの耐性菌リスクも考慮されます。
院内肺炎 (HAP)
入院後48時間以降に発症した肺炎です。
- 主な原因菌: 緑膿菌、MRSA、腸内細菌科などのグラム陰性桿菌が多く、患者の基礎疾患や重症度により多岐にわたります。
※誤嚥性肺炎について
上記すべての分類で起こり得ますが、特に高齢者においては、嚥下機能低下により口腔内の常在菌や胃内容物を誤嚥して生じるケースが非常に多く見られます。
呼吸器症状と全身症状
呼吸器症状
- 咳嗽(咳)・喀痰
- 生体防御反応として異物を排出しようとするために生じます。細菌性では膿性痰、マイコプラズマ等では乾性咳嗽が特徴的です。
- 呼吸困難・頻呼吸
- ガス交換障害の代償として、呼吸回数を増やして酸素を取り込もうとします。
- 胸痛
- 炎症が胸膜まで及ぶと、深呼吸時などに痛みが生じます(胸膜炎)。
全身症状
- 発熱・悪寒戦慄
- 炎症反応によるサイトカインの影響です。
- 倦怠感・食欲不振・脱水
- 発熱による不感蒸泄の増加や、摂取量の低下により脱水になりやすいです。
【重要】高齢者の非特異的症状
高齢者の場合、典型的な「発熱・咳・痰」が見られないことがあります。
- なんとなく元気がない(活動性低下)
- 食欲がない
- 意識レベルの低下(ぼーっとしている)
- 失禁が増えた
これらが肺炎のサインであることも多いため、注意深い観察が必要です。
治療・対症療法
治療の基本は「原因菌の除去」と「全身管理」です。
- 薬物療法(抗菌薬)
- 原因菌が特定されるまでは、患者の背景や重症度から菌を推定して抗菌薬を開始します(エンピリック治療)。培養結果が出次第、感受性のある薬剤へ変更します(デエスカレーション)。
- 酸素療法
- 低酸素血症がある場合、鼻カニューレや酸素マスクで酸素投与を行います。重症例ではネーザルハイフローや人工呼吸管理が必要です。
- 輸液管理
- 脱水補正や循環動態の維持のために輸液を行います。ただし、過剰な輸液は肺水腫を悪化させるため、IN/OUTバランスの管理が重要です。
- 胸腔ドレナージ
- 胸水貯留や膿胸を併発している場合は、ドレーンを挿入して排液を行います。
看護のポイント
看護師は「呼吸状態の改善」「合併症予防」「早期発見」を主軸に介入します。
フィジカルアセスメントとモニタリング
- 呼吸音の聴取: 断続性ラ音(水泡音:ブツブツ、捻髪音:パチパチ)の有無や左右差、最強点の確認。
- 呼吸様式: 努力呼吸、呼吸数、リズム、SpO2の変動。
- 喀痰の性状: 色、粘稠度、量を観察し、喀出困難な場合は排痰援助を行います。
呼吸安楽位と排痰ケア
- 体位ドレナージ
- 患側を上にする(健側を下にする)ことで、患側の換気を改善させつつ排痰を促す場合がありますが、血流増加による酸素化への影響も考慮し、患者に合った安楽な体位を選択します。一般的にはセミファーラー位やファーラー位が横隔膜を下げ、肺の拡張を助けます。
- 加湿
- 痰が固い場合は、十分な加湿や水分補給(禁忌でなければ)を行います。
感染対策と誤嚥予防
- 標準予防策(スタンダードプリコーション)
- 処置前後の手洗いはもちろん、喀痰吸引時の曝露対策を行います。
- 口腔ケア
- 誤嚥性肺炎の予防・悪化防止において最も重要です。口腔内細菌数を減らし、気道への細菌垂れ込みを防ぎます。
- 食事介助
- 嚥下状態に合わせて、食形態の調整や食事時の姿勢(頸部前屈など)を整え、食後の座位保持(30分〜1時間)を徹底します。
患者・家族教育
- 高齢者には肺炎球菌ワクチンの接種を推奨します。
- 退院後の生活を見据え、再発予防のための口腔ケア指導や嚥下訓練の必要性を説明します。