【脊椎外傷・体動制限】ログロール法を用いた寝衣交換の手順と根拠
あずかん脊椎外傷の患者さん、特に術後や急性期で体動制限(多くは脊椎の回旋・屈曲・伸展の禁止)がある場合、寝衣交換は通常のケアとは異なり、高度な注意と技術が求められます。この時期のケアで最も重要なのは「脊椎の安定を保つこと」です。
この記事では、看護師2名以上で実施する「ログロール法(丸太転がし法)」を用いた寝衣交換について分かりやすく、手順とその根拠を詳しく解説します。
目次
準備物品
- 新しい寝衣(前開きのもの、できれば上下が分かれているタイプ)
- バスタオル
- 必要に応じて:清拭タオル、おむつ、防水シーツなど
- 応援の看護師(最低でも2名、患者さんの体格によっては3名以上で実施)
ログロール法を用いた寝衣交換:手順と根拠
ログロール法とは、頭部・頸部・体幹・骨盤を一直線に保ったまま、丸太(Log)を転がすように体位変換する技術です。脊椎に捻れや屈曲が加わることを防ぎます。
事前準備
| 手順 | 看護の根拠 |
|---|---|
| 1. スタッフの確保と役割分担 ・看護師2名以上を確保する。 ・頭側担当(リーダー)、体幹・下肢担当など、役割を明確にする。リーダーが指示を出す。 | ・脊椎の安定化 複数のスタッフで体を分担して支えることで、脊椎が一直線に保たれます。役割と指示系統を明確にすることで、チームの動きが統一され、安全性が格段に向上します。 |
| 2. 患者への説明と環境整備 ・患者さんに、体を一直線に保ったまま横を向くことを説明し、協力を得る。 ・カーテンを閉め、室温を調整する。 ・ベッドを水平にし、ケアしやすい高さに調整する。 | ・不安の軽減と協力 患者さんは動くことに強い恐怖を感じています。手順を丁寧に説明することで不安を和らげ、意図しない動きを防ぎます。 ・安全・安楽な環境 ベッドを水平にすることは脊椎の安定に不可欠です。 |
| 3. 寝衣と体の準備 ・掛け物を外し、バスタオルをかける。 ・寝衣のボタンなどを全て外しておく。 ・患者さんの両腕を胸の上で組んでもらう(可能なら)。 | ・プライバシー保護と保温 基本的なケアの原則です。 ・効率化と安全 事前に外しておくことで、体位変換後の操作が最小限になります。 ・脊椎の安定 腕を組むことで体幹が安定し、体位変換時に腕がベッドの柵などに当たるのを防ぎます。 |
上衣の交換
| 手順 | 看護の根拠 |
|---|---|
| 1. ログロールでの側臥位(1回目) ・リーダーの「せーの」という掛け声に合わせ、全員で頭部から足先までを一直線に保ちながら、ゆっくりと側臥位にする。 | ・脊髄損傷のリスク回避 ログロール法は、脊椎への回旋・屈曲・伸展ストレスを最小限にし、二次的な脊髄損傷を防ぐための最重要技術です。 |
| 2. 上衣を脱がせる ・患者さんの背中側の寝衣を、体の中心まで丁寧に丸め込み、体の下に押し込む。 | ・効率的なケア 次の体位変換でスムーズに寝衣を抜き取るための準備です。この際、体を捻らないように慎重に行います。 |
| 3. 新しい上衣をセットする ・新しい寝衣の半分を、同様に体の中心まで丸め込み、古い寝衣と一緒に体の下にセットする。 | ・最小限の体位変換 一度の体位変換で「脱ぐ準備」と「着る準備」を同時に行うことで、患者さんの負担とリスクを軽減します。 |
| 4. 仰臥位に戻す ・再びリーダーの掛け声で、全員でゆっくりと仰臥位に戻す。 | ・脊椎の保護 体位を戻す際も、脊椎の一直線を厳密に保ちます。 |
| 5. ログロールでの側臥位(2回目) ・今度は反対側へ、同様にログロールで側臥位にする。 | ・ケアの継続 反対側のケアを行うため、再度安全な体位を確保します。 |
| 6. 寝衣の着脱を完了させる ・体の下から、古い寝衣と新しい寝衣をゆっくりと引き出す。 ・古い寝衣の袖を抜き、新しい寝衣の袖を通す。 | ・患部の保護 麻痺がある場合は「脱健着患」が原則ですが、脊椎外傷直後は両腕を患側とみなし、無理な力を加えないよう最大限の注意を払います。 |
| 7. 仕上げ ・仰臥位に戻し、寝衣のしわを伸ばし、ボタンを留める。 | ・褥瘡予防と安楽 しわは皮膚への圧迫となり、褥瘡の原因になります。特に感覚障害がある場合は重要です。 |
下衣の交換
下衣の交換も、基本はログロール法で行います。臀部を少し浮かせてもらうといった動作は禁忌です。
| 手順 | 看護の根拠 |
|---|---|
| 1. ログロールでの側臥位 ・上衣と同様に、ログロールで患者さんを側臥位にする。 | ・脊椎の保護 下半身のケアでも、脊椎の安定が最優先事項であることに変わりはありません。 |
| 2. 下衣を脱がせ、新しいものをセットする ・片方の臀部を少しだけ持ち上げるように支え、下衣を膝下まで下げる。 ・可能であれば、そのまま足先まで脱がせる。 ・新しい下衣を、同様に片足ずつ通せるように体の下にセットする。 | ・最小限の動き 体の動きを最小限にするため、片側ずつ、少しずつ行います。臀部を持ち上げる際は、決して腰を捻らないように体幹全体を支えます。 |
| 3. 反対側へのログロールと仕上げ ・反対側へログロールし、残りの下衣を完全に脱がせる。 ・新しい下衣を足に通し、腰まで引き上げる。 ・仰臥位に戻し、しわを完全に伸ばす。 | ・褥瘡予防 仙骨部や踵部は褥瘡の好発部位です。ズボンの縫い目やしわが当たらないように、丁寧に整えます。 |
観察のポイント
神経症状の変化: ケアの前後で、四肢の動きや感覚(しびれ、痛みなど)に変化がないか必ず確認する。
疼痛の有無と程度: 痛みの増強がないか、表情や言動から注意深く観察する。
バイタルサイン: 血圧や脈拍の変動に注意する(神経原性ショックなど)。
皮膚の状態: 発赤、創部からの滲出液の有無、褥瘡の初期兆候がないか観察する。