チャンス骨折の病態生理から看護のポイントまで徹底解説!
あずかん今回は、脊椎骨折の中でも特殊な「チャンス骨折」について、病態生理から看護のポイントまで詳しく解説します。救急外来や整形外科病棟で出会う可能性のある疾患ですので、この記事を読んでしっかりと知識を深めていきましょう。
脊椎が引き裂かれる骨折
チャンス骨折は、脊椎が急激に強く屈曲し、その後、伸展することで発生する特殊な骨折です。この骨折は、前方・中央・後方の3つの柱で支えられている脊椎のうち、前方と中央の柱が圧迫され、後方の柱が引き伸ばされる(伸延損傷)ことによって生じます。
具体的には、椎体の前方が圧迫骨折を起こし、後方の棘突起や椎弓、靭帯などが水平に断裂するのが特徴です。この「引き裂かれる」ような損傷メカニズムから、伸延-屈曲損傷とも呼ばれます。
この骨折の最も危険な点は、脊椎の不安定性が非常に高いことです。後方の支持組織が断裂しているため、脊髄損傷を合併するリスクが高く、患者の予後に大きく影響します。
シートベルトによるものが代表的な原因
チャンス骨折の最も代表的な原因は、交通事故です。特に、2点式シートベルト(腰のみを固定するタイプ)を着用している際に、衝突の衝撃で上半身が強く前に倒れ込むことで発生しやすいと言われています。
腹部を支点にして体が「く」の字に折れ曲がり、脊椎に強大な屈曲力と伸延力がかかることが直接的な原因です。
その他、高所からの転落などで同様のメカニズムが働き、発生することもあります。
腹痛や麻痺の症状に要注意
チャンス骨折の主な症状は以下の通りです。
背部痛
骨折部位に強い痛みが生じます。
腹痛
腹部の圧迫により、腹腔内臓器(小腸、大腸、膵臓など)の損傷を合併することがあり、腹痛や腹膜刺激症状が見られる場合があります。これはシートベルト損傷と呼ばれ、見逃されやすいため特に注意が必要です。
下肢の麻痺やしびれ
脊髄損傷を合併した場合、下肢の運動麻痺や感覚障害、膀胱直腸障害(排尿・排便のコントロールができない)などが現れます。
受傷直後は背部痛のみで、麻痺などの神経症状がない場合でも、脊椎が不安定なため、体動によって遅発性の麻痺が出現する危険性があります。
治療・対症療法
治療の目的は、脊椎の安定性を回復させ、脊髄損傷の予防と回復を図ることです。
保存的治療
骨のずれがほとんどなく、神経症状がない場合は、ギプスや硬性コルセットなどの装具を用いて体幹を固定し、骨癒合を待つ保存的治療が選択されます。数ヶ月間の長期的な安静が必要です。
外科的治療
脊椎の不安定性が強い場合や、脊髄損傷を合併している場合は、手術が必要です。スクリューやロッドを用いて骨折部を内側から固定する脊椎固定術が行われます。神経の圧迫がある場合は、同時に除圧術も行います。
また、腹腔内臓器損傷を合併している場合は、そちらの治療も並行して行われます。
看護のポイント
チャンス骨折の患者を受け持つ上で、最も重要な看護のポイントは二次的な脊髄損傷の予防です。
全身状態の観察
バイタルサインはもちろん、腹痛の有無や程度、腹部の膨満感、圧痛などの腹部症状を注意深く観察します。腹腔内出血や臓器損傷の兆候を見逃さないようにしましょう。
神経症状の観察
下肢の運動・感覚麻痺、しびれの有無や範囲、膀胱直腸障害の出現に注意します。意識レベルや瞳孔所見など、頭部外傷の合併も念頭に置いた観察が必要です。
安静の保持と体位変換
医師の指示があるまで、原則として絶対安静です。体位変換を行う際は、必ず複数人で丸太様体位変換(Log-rolling)を行い、脊椎が一直線に保たれるようにします。不用意な体動は、脊髄損傷を引き起こすリスクがあるため、患者にも安静の重要性を十分に説明します。
疼痛管理
痛みの程度をアセスメントし、医師の指示のもと鎮痛薬を適切に使用します。痛みが強いと、呼吸が浅くなったり、離床が進まなかったりするため、積極的にコントロールします。
精神的ケア
突然の事故による受傷で、患者と家族は大きな不安を抱えています。精神的な動揺や今後の生活への不安に対して、傾聴し、共感的な態度で関わることが大切です。