シェーグレン症候群について|病態から看護のポイントまで徹底解説
あずかんシェーグレン症候群は、患者さんのQOLに大きく影響する自己免疫疾患です。この疾患を深く理解し、適切なケアを提供することは非常に重要です。
この記事では、シェーグレン症候群の病態生理から原因、症状、治療法、そして最も重要な看護のポイントまで、分かりやすく解説します。
なぜ乾燥症状が起きるのか
シェーグレン症候群は、主に涙腺や唾液腺などの外分泌腺が、自己の免疫システムによって攻撃される自己免疫疾患です。
1.リンパ球の浸潤
通常は体を守るはずのリンパ球が、涙腺や唾液腺を異物と誤認して攻撃(浸潤)します。
2.腺組織の破壊
リンパ球の攻撃により、腺組織が慢性的に炎症を起こし、徐々に破壊されていきます。
3.分泌物の減少
腺組織が破壊されると、涙や唾液の分泌が減少し、ドライアイやドライマウスといった特徴的な乾燥症状が現れます。
この乾燥症状は、単に不快なだけでなく、角膜の損傷や虫歯の増加など、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。
何が引き金になるのか
シェーグレン症候群の正確な原因はまだ完全には解明されていません。しかし、以下のようないくつかの要因が関与していると考えられています。
遺伝的要因: 特定の遺伝子を持つ人が発症しやすい傾向があります。
環境的要因: ウイルスなどの感染症が、自己免疫反応の引き金になる可能性が指摘されています。
免疫異常: 自己抗体である「抗SS-A/Ro抗体」や「抗SS-B/La抗体」が高頻度で検出されることが特徴です。
女性ホルモンの関与: 患者の多くが女性であることから、女性ホルモンの影響も考えられています。
乾燥だけではない全身症状
腺症状(乾燥症状)
- ドライアイ(乾燥性角結膜炎): 目の乾き、異物感、かすみ、まぶしさ、疲れ目など。
- ドライマウス(口腔乾燥症): 口の渇き、食べ物が飲み込みにくい、会話がしにくい、味覚の変化、虫歯の増加、口内炎など。
- その他の乾燥症状: 鼻の乾燥、皮膚の乾燥、腟の乾燥による性交痛なども見られます。
腺外症状(全身症状)
シェーグレン症候群は外分泌腺だけでなく、全身のさまざまな臓器に影響を及ぼすことがあります。
- 関節: 関節痛や朝のこわばりなど、関節リウマチに似た症状が現れることがあります。
- 皮膚: 発疹(特に環状紅斑)やレイノー現象(手足の指先が白くなる)が見られます。
- 肺: 間質性肺炎を起こし、空咳や息切れが出ることがあります。
- 腎臓: 尿細管性アシドーシスなど、腎臓の機能障害をきたすことがあります。
- その他: 疲れやすさ、発熱、うつ症状など、多彩な全身症状を伴うことがあります。
治療・対症療法
現在のところ、シェーグレン症候群を完治させる治療法はありません。そのため、治療の主な目的は、症状を和らげ、合併症を防ぎ、QOLを維持することにあります。
対症療法(乾燥症状に対して)
- ドライアイ
人工涙液やヒアルロン酸点眼薬で潤いを補給します。涙の排出を抑えるために涙点プラグを挿入することもあります。 - ドライマウス
人工唾液や唾液分泌を促進する内服薬(セビメリン塩酸塩水和物、ピロカルピン塩酸塩など)が用いられます。こまめな水分補給も重要です。
全身療法(腺外症状に対して)
- 非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs): 関節痛などに対して使用します。
- ステロイド: 関節炎や皮膚症状、間質性肺炎など、活動性の高い全身症状に対して使用します。
- 免疫抑制薬: ステロイドだけではコントロールが難しい重症な場合に用いられます。
看護のポイント
乾燥症状の緩和とセルフケア支援
- 口腔ケア
- うがい薬や保湿ジェルなどの使用を勧め、口腔内の清潔と保湿を保つよう指導します。
- 虫歯のリスクが高いため、定期的な歯科受診の重要性を説明します。
- 食事の際は、水分を多く含んだものや、とろみのあるものを選ぶなどの工夫を一緒に考えます。
- 眼のケア
- 処方された点眼薬を正しく使用できるよう指導します。
- 乾燥を防ぐために、加湿器の使用や、PC作業中の休憩などをアドバイスします。
- 皮膚・粘膜ケア
- 皮膚の保湿剤の使用や、性交痛に対する潤滑ゼリーの使用など、デリケートな問題にも配慮しながら情報提供を行います。
全身症状のアセスメントとモニタリング
- 関節痛、皮膚症状、呼吸器症状(咳、息切れ)など、腺外症状の有無や変化を注意深く観察します。
- 「疲れやすさ」や「痛み」など、患者の主観的な訴えを傾聴し、数値化して評価することも有効です。
- 治療薬(特にステロイドや免疫抑制薬)の副作用(易感染、骨粗鬆症など)に注意し、感染予防の指導を行います。
精神的・心理的サポート
- シェーグレン症候群は他者から理解されにくい症状が多く、患者は孤独感や不安を抱えがちです。共感的な態度で話を聴き、患者の感情を受け止めることが重要です。
- 病気と上手く付き合っていくためのコーピング(対処法)を、患者と一緒に見つけていく姿勢が求められます。
- 必要に応じて、患者会などの情報を提供したり、心理専門職との連携を検討したりします。