熱型について

熱型の種類と観察・ケアのポイントを徹底解説

あずかん

患者さんのバイタルサイン測定で「熱がある」と一口に言っても、その上がり方や下がり方には様々なパターン(熱型)があることをご存知でしょうか?熱型は、患者さんの状態をアセスメントし、原因となっている疾患を推測するための非常に重要な情報源となります。
この記事では、代表的な熱の種類とその特徴、そして看護のポイントについて、分かりやすく解説します。


目次

発熱とは

まず、なぜ熱が出るのか、そのメカニズムから理解しましょう。

私たちの体温は、脳の視床下部にある「体温調節中枢」によって、約37℃前後に保たれています。ここに、発熱物質(パイロジェン)が作用することで、体温のセットポイントが引き上げられ、発熱が起こります。

主な流れは以下の通りです。

1.発熱物質の発生
細菌やウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、それらを攻撃するために免疫細胞(マクロファージなど)が活性化します。この過程で、「サイトカイン」と呼ばれる物質が産生されます。このサイトカインが内因性パイロジェンとして働きます。
2.体温調節中枢への作用
サイトカインが血流に乗って脳に到達すると、プロスタグランジンE2(PGE2)という物質の産生を促します。
3.セットポイントの上昇
PGE2が視床下部の体温調節中枢に作用し、体温のセットポイントを通常より高い温度に設定し直します。
4.体温の上昇
脳からの指令で、体はセットポイントまで体温を上げようとします。皮膚の血管を収縮させて熱の放散を防ぎ、筋肉を震わせて熱を産生します(悪寒・戦慄)。こうして体温が上昇した状態が「発熱」です。


代表的な熱型とその原因・症状

熱型は大きく5つに分類されます。それぞれの特徴と、考えられる原因疾患を見ていきましょう。

稽留熱

  • 特徴: 38℃以上の高熱が続き、1日の体温差が1℃以内と変動が少ない状態。
  • 原因疾患: 肺炎球菌性肺炎、腸チフス、パラチフス、粟粒結核、髄膜炎など。
  • 症状: 持続的な高熱による倦怠感、消耗が激しい。意識レベルの低下や、せん妄などを引き起こすこともあります。

弛張熱

  • 特徴: 38℃以上の高熱が続き、1日の体温差が1℃以上ある状態。平熱(37℃以下)まで下がることはありません。
  • 原因疾患: 敗血症、化膿性疾患(膿瘍など)、ウイルス感染症、悪性腫瘍(がん)、膠原病(特に成人Still病)など。
  • 症状: 熱が上下する際に、悪寒・戦慄や大量の発汗を繰り返すことが多いです。体力の消耗が激しく、脱水になりやすい傾向があります。

間欠熱

  • 特徴: 1日のうちで、高熱と平熱の間を周期的に変動する状態。熱がない時間帯(無熱期)があります。
  • 原因疾患:
    • 毎日変動: 敗血症、膿瘍など。
    • 48時間ごと: 三日熱マラリア
    • 72時間ごと: 四日熱マラリア
  • 症状: 弛張熱と同様に、悪寒・戦慄と発汗を伴うことが多いです。無熱期には比較的症状が落ち着くため、患者さんは「治った」と感じることもありますが、再び発熱します。

周期熱

  • 特徴: 数日間の発熱期と、数日間の無熱期を繰り返す状態。
  • 原因疾患: 周期性発熱・アフタ性口内炎・咽頭炎・リンパ節炎症候群(PFAPA症候群)、ホジキンリンパ腫(ペル・エプスタイン熱)など。
  • 症状: 発熱期には倦怠感や関節痛などを伴いますが、無熱期には症状が消失します。原因疾患によって周期は異なります。

不規則熱

  • 特徴: 上記のいずれにも当てはまらない、不規則な熱型。
  • 原因疾患: 敗血症の初期や終末期、インフルエンザ、膠原病、心因性発熱など、様々な疾患で見られます。
  • 症状: 熱のパターンが予測できず、患者さんの苦痛が長引くことがあります。

治療・対症療法

発熱は体が生体防御反応として起こしているため、むやみに下げるべきではありません。しかし、高熱による苦痛が強い場合や、体力消耗が激しい場合には、対症療法を行います。

  • 薬物療法
    • 解熱鎮痛薬: アセトアミノフェンや、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などが使用されます。医師の指示に従い、適切なタイミングと量で投与します。特に、悪寒・戦慄が治まり、体温が上がりきった「極期」に使用するのが一般的です。
  • クーリング
    • 目的: 熱の放散を促し、患者の安楽を図ること。
    • 方法: 頸部、腋窩、鼠径部など、太い動脈が走行している部位を冷やします(物理的クーリング)。氷枕やアイスノンを使用します。
    • 注意点: 悪寒・戦慄がある時期(悪寒期)のクーリングは、患者の苦痛を増大させるため禁忌です。

看護のポイント

発熱のプロセスは「悪寒期」「極期」「解熱期」の3つに分けられます。

悪寒期(体温上昇期)

  • 状態
    • 体温を上げようとして、悪寒や震え(シバリング)が見られます。手足は冷たく、鳥肌が立つこともあります。
  • 看護ケア
    • 保温: 電気毛布や掛け物を追加し、体を温めます。湯たんぽの使用も有効ですが、低温やけどに十分注意しましょう。
    • 室温調整: 部屋を暖かく保ちます。
    • 安楽な体位: 患者が楽な姿勢で過ごせるように整えます。

極期(熱のピーク)

  • 状態
    • 体温が上がりきり、高熱が続きます。顔面紅潮、熱感、頭痛、倦怠感、食欲不振などが見られます。
  • 看護ケア
    • クーリング: 医師の指示のもと、クーリングを開始します。患者の表情や言動を観察し、不快感が強い場合は中断・調整します。
    • 水分補給: 発汗や不感蒸泄により脱水になりやすいため、経口または点滴での水分補給を促します。
    • 環境整備: 寝衣やシーツが湿っていれば交換し、清潔で快適な環境を保ちます。
    • 口腔ケア: 口腔内が乾燥しやすいため、定期的な保湿ケアを行います。

解熱期(体温下降期)

  • 状態
    • セットポイントが平熱に戻り、体温が下降し始めます。大量の発汗が見られます。
  • 看護ケア
    • 発汗への対応: こまめに汗を拭き、寝衣やシーツを交換します(更衣・清拭)。これにより、皮膚トラブルや体温の低下しすぎを防ぎます。
    • 水分・電解質の補給: 大量の発汗により水分と電解質が失われるため、経口補水液などで補給します。
    • 保温: 必要以上のクーリングは中止し、冷えすぎていないか観察します。

【最も重要なこと】
熱型を正確に把握するためには、定期的な検温と記録が不可欠です。体温測定の結果を点だけでなく線で捉え、グラフ化することで、どの熱型に当てはまるのか、また治療によって熱型がどう変化したのかをアセスメントできます。医師への的確な報告にも繋がり、診断や治療方針の決定に役立ちます。


参考資料
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