点滴の滴下調整ミスでヒヤリハット!失敗から学ぶ実践的コツ
新人看護師のみなさん、毎日の業務お疲れ様です。覚えることがたくさんあり、特に注射や点滴などの手技は緊張の連続ですよね。
私も今でこそ中堅看護師として後輩指導にあたっていますが、新人時代はたくさんの失敗を経験しました。今回の失敗談は、「点滴の滴下ミス」の体験談と、そこから学んだ反省点や実践的な対策についてお話しします。
時間通りに落ちない!点滴の滴下ミス
あれは、私が新人看護師として病棟に配属されて3ヶ月ほど経った頃のことです。
担当していたのは、日中に点滴を行う予定の患者さんでした。はじめは前腕に点滴を留置しようとしましたが、血管が蛇行しており新人の私には手も足も出ませんでした。
そのため、先輩に相談し比較的太くて見つけやすい腕の正中静脈に点滴を留置しました。ここまでは順調だったのです。
滴下計算を行い、クレンメを調整して滴下数も完璧に合わせ、「これで大丈夫!」と安心し、一度その場を離れました。
しかし、1時間後に訪室すると、点滴がほとんど落ちていないことに気づきました。予定量の半分も投与できていなかったのです。
「どうして!?朝は完璧に合わせたのに!」
頭が真っ白になりました。
なぜ滴下ミスは起きたのか?
原因
原因は非常に単純なことでした。患者さんが、点滴をしている腕を屈曲させていたのです。
正中静脈は肘関節の近くにあるため、腕を曲げると血管が圧迫され、点滴のルートも折れ曲がってしまいます。その結果、滴下が止まってしまっていたのでした。
反省点
その時の私の反省点は以下の3つです。
穿刺部位の選択
穿刺のしやすさだけを優先してしまい、患者さんのADLや点滴中の過ごし方を全く考慮できていませんでした。日中の活動時間帯であれば、腕を動かすことは容易に想像できたはずです。
患者さんへの説明不足
点滴中に腕を曲げると滴下が止まってしまう可能性があることを、患者さん本人に十分に説明していませんでした。「なるべく安静にしてくださいね」という曖昧な声かけしかできていなかったのです。
観察不足
滴下を合わせた後、「きっと大丈夫だろう」と思い込んでしまい、こまめな訪室と確認を怠っていました。
幸い、すぐに先輩看護師に報告し、穿刺部位を変更して無事に点滴を終えることができましたが、一歩間違えれば患者さんの治療に影響を与えかねない、重大なインシデントにつながる可能性がありました。この経験は、私にとって忘れられない教訓となりました。
滴下ミスを防ぐための3つの実践的コツ
この失敗から、私は以下の3つのことを常に意識するようになりました。
穿刺部位は「生活」を考えて選ぶ
点滴の穿刺部位を選ぶ際は、血管の走行や太さだけでなく、以下の点を考慮しましょう。
患者さんの利き手はどちらか?
食事や排泄、読書など、点滴中に患者さんはどのように過ごすか?
関節の近くなど、動きによって滴下に影響が出やすい部位ではないか?
可能であれば、前腕など、関節の動きに影響されにくい部位を選ぶのが理想的です。
具体的な言葉で説明し、協力を得る
患者さんに説明する際は、ただ「安静に」と言うだけでなく、なぜ安静が必要なのか、具体的な理由を伝えましょう。
「点滴をしている腕を深く曲げてしまうと、薬の落ちが悪くなって時間通りに終わらなくなってしまう可能性があります。少しご不便ですが、なるべく腕を伸ばした状態で過ごしていただけると助かります。」
このように伝えるだけで、患者さんの協力度は大きく変わります。
「だろう」ではなく「かもしれない」で観察する
「さっき合わせたから大丈夫だろう」という思い込みは禁物です。
患者さんが体動したかもしれない
何かの拍子にルートが屈曲したかもしれない
常に「かもしれない」という視点を持ち、訪室のたびに滴下状況や穿刺部位、ルートの状態を確認する習慣をつけましょう。
失敗は成長の糧になる
新人時代は、誰もが失敗を経験します。大切なのは、失敗から何を学び、次にどう活かすかです。
今回の私の失敗談が、皆さんの日々の看護実践のヒントになれば幸いです。不安なことや分からないことがあれば、一人で抱え込まずに、ぜひ先輩看護師に相談してくださいね。応援しています!