局所陰圧閉鎖療法(NPWT)について

局所陰圧閉鎖療法(NPWT)の基本と看護のポイントを徹底解説

あずかん

創傷治癒の遅延や、感染リスクの高い創傷の管理に用いられる「局所陰圧閉鎖療法(NPWT)」。近年、多くの医療現場で導入されている治療法ですが、「いまいち仕組みが分からない」「どんなことに注意すればいいの?」と悩む看護師さんも多いのではないでしょうか。
この記事では、NPWTの基本的な知識から、現場で役立つ看護のポイントまで、分かりやすく解説します。


目次

なぜNPWTは創傷治癒を促進するのか

NPWTは、創傷部にドレッシング材を貼り付け、そこを吸引チューブにつなぎ、持続的または間欠的に陰圧(-50〜-125mmHg程度)をかける治療法です。この「陰圧」が、創傷治癒に以下の効果をもたらします。

肉芽組織の増殖促進
創傷床への物理的な刺激が細胞増殖を促し、良好な肉芽形成を促進します。
浮腫の軽減と血流改善
創傷周囲の余分な水分(浮腫)を物理的に除去することで、創傷床の血流が増加し、治癒に必要な酸素や栄養素が届きやすくなります。
過剰な滲出液の除去
滲出液には創傷治癒を阻害する因子が含まれており、これを持続的に除去することで治癒環境を整えます。
創の収縮
陰圧によって創縁が物理的に引き寄せられ、創の収縮を助けます。
感染制御
創を閉鎖環境に置くことで外部からの細菌汚染を防ぎ、滲出液と共に細菌を体外へ排出する効果が期待できます。

これらの作用が複合的に働くことで、従来のガーゼ交換による治療と比べて、創傷治癒を効果的に促進することができるのです。


どのような創傷にNPWTが使われるのか

NPWTは、自力での治癒が難しい、あるいは治癒に時間がかかると予測される様々な創傷に適用されます。

  • 急性創傷
    • 外傷(開放骨折、デグロービング損傷など)
    • 手術後創(縫合不全、離開創など)
  • 慢性創傷
    • 褥瘡(特に深いもの)
    • 糖尿病性足潰瘍
    • 下腿潰瘍(静脈性、動脈性)
  • その他
    • 植皮術や皮弁術後の固定
    • 感染創(適切なデブリードマン後)

ただし、コントロールされていない壊死組織や悪性腫瘍が存在する創、未治療の骨髄炎、血管や臓器が露出している創などには禁忌とされていますので、適用の判断が重要です。


NPWT適用中の観察点

NPWT適用中の患者では、全身状態に加えて、特に「創部」と「機械」の観察が重要になります。

  • 創部の観察
    • ドレッシング材の状態: しっかりと密閉されているか(シワや浮きがないか)、空気漏れ(リーク)がないか。
    • 滲出液: 量、色、性状、臭い。急激な増加や血性への変化、悪臭の出現は感染や出血のサインかも。
    • 創周囲の皮膚: 発赤、浸軟、水疱、痛みなどがないか。ドレッシング材による皮膚トラブルに注意が必要。
    • 患者の訴え: 創部の痛み、違和感、痒みなど。
  • 機械の観察
    • 陰圧設定: 医師の指示通りの圧に設定されているか。
    • 作動状況: 正常に陰圧がかかっているか。アラームが鳴っていないか。
    • キャニスター: 滲出液が溜まる容器。廃液量と性状を定期的に確認する。

トラブルシューティング

アラームが鳴る場合

原因
最も多いのは空気漏れ(リーク)です。その他、チューブの屈曲・閉塞、キャニスターの満杯などが考えられます。
対処
まずはチューブが折れ曲がったり、患者の体で圧迫されたりしていないか確認します。
次に、ドレッシング材の縁を指でなぞり、浮きや剥がれがないか確認します。リークが疑われる箇所をフィルム材で補強します。
キャニスターが満杯であれば交換します。
それでもアラームが止まらない場合は、機器の不具合も考えられるため、先輩や医師、医療機器メーカーに相談します。

痛みがある場合

原因
陰圧による圧迫感、肉芽形成に伴う痛み、ドレッシング材の交換時の刺激などが考えられます。
対処
まずは患者の痛みの程度(NRSなど)を評価します。
鎮痛薬の使用を医師に相談します。
ドレッシング材交換前に鎮痛薬を投与する(タイミング療法)ことも有効です。
陰圧設定が強すぎる場合は、医師に減圧を相談することもあります。

出血が見られる場合

原因
不適切なデブリードマン、抗凝固薬の内服、肉芽の損傷などが考えられます。
対処
少量のにじむ程度の出血であれば、経過観察となることが多いです。
キャニスター内に鮮血が多量に溜まる、ドレッシング材の下で拍動性の出血が見られるなど、活動性の出血が疑われる場合は、直ちにNPWTを中止し、創部を圧迫して医師に報告します。 これは緊急事態です。


看護のポイント

密閉性の維持と皮膚トラブルの予防

ドレッシング材を貼付する際は、創周囲の皮膚を十分に洗浄・乾燥させ、シワが寄らないように丁寧に貼ります。
皮膚保護剤(スプレーやワイプ)を活用し、ドレッシング材による皮膚への刺激を最小限にします。
交換時には、ゆっくりと剥がして皮膚損傷を防ぎます。

感染管理

ドレッシング材の交換は、清潔操作を徹底します。
滲出液の性状や量、患者のバイタルサイン(特に発熱)の変化に注意し、感染兆候を早期に発見します。

患者の安楽とQOLへの配慮

チューブや機器が患者の動きを妨げないように、整理・固定します。
機器の作動音やアラームについて事前に説明し、不安を軽減します。
ポータブルタイプの機器であれば、早期離床やリハビリも可能です。患者の状態に合わせて、活動範囲の拡大を支援します。
治療が長期にわたることも多いため、患者やご家族の精神的なサポートも重要です。治療の進捗を共有し、前向きに取り組めるように関わっていきましょう。

参考資料
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