ゆるく、ひといき
疾患

大腿骨頭壊死(ANF)について

大腿骨壊死症ってなんで大腿骨頸部骨折で起こりやすいの?
理由は大腿骨頭周囲にあるよ!大腿骨頭壊死症には症候性と特発性があるから、その違いも学んでいこう!

症候性大腿骨頭壊死症と特発性大腿骨頭壊死症ってなに?

まず骨壊死とは、血流の阻害により骨細胞・骨基質・骨髄細胞の壊死が生じた状態のことである。
そのうち、原因が特定できるものを”症候性”、原因が特定できないものを”特発性”と分けている。
症候性大腿骨頭壊死症には、①外傷性②塞栓性③放射線照射後④手術後 があり、大腿骨頸部骨折後の大腿骨頭壊死症は①外傷性または④手術後が原因と考えられる。
大腿骨頸部骨折により、大腿骨を栄養する血管(内側大腿回旋動脈の分枝)が損傷、血流が阻害され大腿骨頭壊死症が発症する。また、術後の大腿骨頭壊死症に対して荷重をかけ続けると、壊死部分が陥没し圧潰が進行し、大腿骨頸部骨折の合併症の一つである遅発性骨頭圧潰(LSC)になってしまう。

特発性大腿骨頭壊死症には、①ステロイド性②アルコール性③特発性があり、成人期において原因不明の大腿骨頭壊死が発生し、骨頭の圧潰変形により発症する。進行すると二次性の変形性股関節症をきたす。 発生機序が解明されておらず、予防法や治療としての薬物療法も確立されていないため、特発性は難病指定の特定疾患となっている。

特徴・症状は?

・症状は荷重時や運動時の股関節痛などで特異的なものはなく、初発の疼痛は2~3週間で軽快することが多い。
・壊死があるだけでは症状は生じず、圧潰し始めて症状が現れる
・両側性の発生は全体の約50%で、ステロイド性の患者では約70%で両側に発生する。(約10%の患者では、上腕骨頭や大腿遠位端などにも骨壊死の発症がみられる)
・男性はアルコール性、女性はステロイド性(特にSLE患者)が多い。
好発年齢は30~40歳代の壮年期

治療方法は?

壊死範囲の大きさや進行度を考慮して治療方針を決めていく。

保存療法

減量、筋力強化訓練、鎮痛薬の使用、杖の使用 を組み合わせながら、壊死部分を免荷した状態で経過観察を行っていく。ただし、荷重部分の壊死は修復されないため、疼痛コントロールが困難になる場合は手術治療となる。

手術療法

関節温存手術(内反骨切り術/骨頭回転骨切り術など)
・比較的若年(50歳前後まで)
・壊死範囲がある程度局限されている
・関節症があまり進行していない
骨切りをし、荷重部に健常骨をもってくるように位置をずらして再固定する手術

人工骨頭置換術/人工股関節全置換術
・関節温存手術ができない場合の手術
大腿骨頭、もしくは寛骨臼も人工材料で置換する手術

予後は?

・壊死の範囲で予後が異なり、壊死範囲が狭い場合や荷重部にない場合は、無症状のこともある。
・症状が出現しても、保存療法により短期間で疼痛が軽減することが多い。
・壊死範囲が広く荷重部の大部分を占める場合は、圧潰が進む可能性が高く徐々に変形性股関節症へと進行し、多くは手術治療が選択される。
・ただし、発症年齢が比較的若く、活動性が高い場合は、人工股関節置換術に対して慎重な検討が必要となる。

なぜ年齢が若い人の人工股関節置換術には検討が必要なの?

もともと人工股関節全置換術には、術後の感染、脱臼、深部静脈血栓症や肺塞栓症を生ずるリスクがあるが、これは他の手術も同様である。
ただし人工股関節全置換術を実施した後、十数年経過すると人工関節のゆるみ、血行性感染症、脱臼などのリスクがあがり、再手術を行う必要がでてくる。
以前置換した人工材料を抜き、新たな人工材料を置換、術後は歩行獲得のためのリハビリを要する。そのための体力が確保できる年齢かなどを検討するため、年齢が若い人の人工股関節全置換術には慎重となってくる。

参考文献
患者がみえる新しい「病気の教科書」 整形外科
病気がみえる11 運動器・整形外科