脱水について

脱水のすべてがわかる!病態生理から看護のポイントまで徹底解説

あずかん

臨床現場で頻繁に遭遇する「脱水」。高齢者や小児、術後の患者さんなど、様々な場面で脱水のリスクは潜んでいます。
今回は、そんな脱水の病態生理から原因、症状、治療、そして最も大切な看護のポイントまで、わかりやすく解説していきます。

目次

脱水のとは

脱水とは、体内の水分が失われ、体液(血液、リンパ液、細胞間液など)が不足した状態を指します。体液は、体内の水分と電解質(ナトリウム、カリウム、クロールなど)で構成されており、生命維持に不可欠な役割を担っています。

脱水は、失われる水分と電解質のバランスによって、主に3つのタイプに分類されます。

高張性脱水

水分が電解質(特にナトリウム)よりも多く失われるタイプです。体液の浸透圧が高くなり、細胞内から細胞外へ水分が移動するため、細胞内脱水が顕著になります。口渇感や意識障害などの症状が出やすいのが特徴です。

等張性脱水

水分と電解質がほぼ同じ割合で失われるタイプです。細胞外液量が減少し、循環血液量の減少(ショック)をきたしやすいのが特徴です。出血や下痢、嘔吐などが原因で起こります。

低張性脱水

電解質(特にナトリウム)が水分よりも多く失われるタイプです。体液の浸透圧が低下し、細胞外から細胞内へ水分が移動するため、細胞内は浮腫傾向になります。しかし、循環血液量は減少するため、血圧低下や倦怠感などの症状が現れます。

これらの病態を理解することで、患者の状態をより深くアセスメントすることができます。

脱水の原因

脱水の原因は大きく分けて3つに分類できます。

  • 水分の摂取不足
    • 食欲不振、嚥下障害
    • 意識障害、認知症
    • つわり、悪心・嘔吐
    • 水分摂取の自己中断(頻尿を気にしてなど)
  • 水分の喪失過多
    • 消化器系からの喪失: 嘔吐、下痢、消化管出血、ドレナージ
    • 腎臓からの喪失: 利尿薬の使用、糖尿病性ケトアシドーシス、尿崩症
    • 皮膚からの喪失: 発熱、発汗、熱中症、広範囲の熱傷
    • 呼吸器からの喪失: 過換気
  • 体液の分布異常(サードスペースへの移行)
    • 手術侵襲、熱傷、敗血症、イレウスなどにより、血管内から細胞間質(サードスペース)へ体液が漏れ出し、有効循環血液量が減少する状態。

脱水の症状

脱水の症状は、その重症度やタイプによって様々です。バイタルサインやフィジカルアセスメントで早期に発見することが重要です。

  • 初期症状
    • 口渇、口唇・口腔内の乾燥
    • 尿量の減少、尿の色が濃くなる
    • 皮膚の乾燥、ツルゴールの低下
    • 倦怠感、脱力感
  • 中等症の症状
    • 頻脈、血圧低下(特に起立性低血圧)
    • 頭痛、めまい、傾眠傾向
    • 腋窩の乾燥
    • 眼球の陥凹
  • 重症の症状
    • 意識障害(昏睡)、けいれん
    • ショック(頻脈、著しい血圧低下、チアノーゼ)
    • 乏尿、無尿
    • ツルゴール低下の増悪(ハンカチーフサイン)

特に高齢者は口渇感を訴えにくく、症状が非典型的な場合が多いため、注意深い観察が必要です。

治療・対症療法

脱水の治療の基本は、失われた水分と電解質の補充です。

  • 経口補水療法
    • 軽度から中等度の脱水で、意識が清明かつ消化器症状が軽度の場合に行われます。
    • 経口補水液(OS-1など)は、水分と電解質がバランスよく配合されており、吸収されやすいのが特徴です。
  • 輸液療法
    • 経口摂取が困難な場合や、重度の脱水、ショック状態の場合に行われます。
    • 脱水のタイプ(高張性、等張性、低張性)や原因疾患、患者の状態(心機能、腎機能など)を考慮して、輸液製剤の種類や投与速度を決定します。
      • 初期輸液・循環動態の維持: 細胞外液補充液(生理食塩水、リンゲル液など)
      • 細胞内への水分補給: 5%ブドウ糖液など
      • 電解質補正: 不足している電解質を補充
  • 原疾患の治療
    • 脱水の原因となっている疾患(感染症、糖尿病など)の治療を同時に行います。

看護のポイント

正確な水分出納バランスの把握

  • INバランス: 経口摂取量(飲水、食事)、輸液量、輸血量などを正確に測定します。
  • OUTバランス: 尿量、便(特に下痢便)、嘔吐物、ドレーンからの排液量、発汗量(発熱時など)を把握します。体重の増減は、体液量の変動を示す最も信頼性の高い指標の一つです。毎日同じ条件下(時間、服装、排泄後など)で測定しましょう。

バイタルサインと臨床症状の継続的な観察

  • 血圧、脈拍、呼吸数、体温を定期的に測定し、変化の兆候を早期に捉えます。特に、頻脈や起立性低血圧は循環血液量減少の重要なサインです。
  • 意識レベル、口渇の有無、口腔内の湿潤状態、皮膚のツルゴール、眼球の陥凹、浮腫の有無などを継続的にアセスメントします。

安楽な体位と環境調整

  • 倦怠感やめまいが強い場合は、転倒・転落のリスクが高まります。安全な環境を整え、必要に応じて離床の介助を行います。
  • 口腔内の乾燥による不快感を緩和するため、口腔ケアをこまめに行います。

経口摂取の援助

  • 経口摂取が可能な場合は、患者さんの好みに合わせた飲み物を用意し、少量ずつ頻回に摂取できるよう促します。
  • 嚥下機能に合わせた水分補給(とろみをつけるなど)も重要です。
  • 「なぜ水分が必要なのか」を丁寧に説明し、患者のセルフケア能力を高めることも看護師の役割です。

輸液管理

  • 医師の指示に基づき、正確なルート、速度で輸液を管理します。
  • 輸液の過剰投与は心不全や肺水腫のリスクを高めるため、呼吸困難、浮腫、頚静脈の怒張などの症状に注意します。
  • 輸液ルートの刺入部の観察(発赤、腫脹、疼痛など)も忘れずに行いましょう。
参考資料
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