コンパートメント症候群の観察項目と根拠を徹底解説!

コンパートメント症候群は、緊急の対応を要する重篤な状態で、見逃されると四肢の機能障害や壊死に至る可能性があります。
この記事では、コンパートメント症候群の早期発見に不可欠な「観察項目」とその「根拠」について、分かりやすく徹底的に解説します。
コンパートメント症候群とは
コンパートメント症候群とは、腕や脚の「コンパートメント(区画)」と呼ばれる、筋肉や神経、血管が収まっているスペースの内圧が異常に上昇することで発症します。
骨折、打撲、ギプスによる圧迫などが原因でコンパートメント内の圧力が上昇すると、その中にある血管が押しつぶされて血流が途絶え、筋肉や神経に酸素や栄養が届かなくなります。この状態が続くと、筋肉や神経は短時間で壊死してしまい、重篤な後遺症を残すことになります。
だからこそ、早期発見・早期治療が何よりも重要なのです。
重要!コンパートメント症候群の5つの観察項目
コンパートメント症候群の観察には、「5つのP」と呼ばれる代表的な症状を確認することが非常に重要です。
症状 | ||
---|---|---|
Pain | 疼痛 | 強い痛み、特に他動運動時痛 |
Pallor | 蒼白 | 血色不良、皮膚が青白い |
Paresthesia | 感覚障害 | しびれ、感覚が鈍くなる |
Pulselessness | 脈拍消失 | 末梢の脈が触れなくなる |
Paralysis | 麻痺 | 手足が動かせなくなる |
これらの症状は、コンパートメント症候群の進行度を示唆する重要なサインです。一つずつ、その観察のポイントと根拠を詳しく見ていきましょう。
Pain(疼痛) – 最も重要な初期症状
観察のポイント
- 「激しい痛み」
- 患者が訴える痛みの強さを確認します。通常の骨折の痛みとは比較にならないほどの、焼け付くような、裂けるような激しい痛みと表現されることが多いです。
- 「鎮痛薬が効かない痛み」
- 通常量の鎮痛薬を投与しても、痛みが全く軽減しない、あるいは悪化する場合は非常に疑わしいサインです。
- 「他動運動時痛 」
- これが最も特異的な所見です。看護師が患者の手指や足指をゆっくりと他動的(受動的)に伸ばした際に、激しい痛みを訴えるかどうかを確認します。例えば、前腕のコンパートメント症候群が疑われる場合、患者の指を受動的に伸展させると激痛が走ります。
なぜ痛みが起こるのか?
コンパートメント内の圧力が上昇すると、まずは筋肉や神経が虚血状態になります。この虚血が、激しい痛みを引き起こす直接の原因です。特に、筋肉を他動的に伸展させると、虚血状態の筋肉がさらに引き伸ばされるため、耐えがたいほどの痛みが生じるのです。この他動運動時痛は、他の症状より早期に出現するため、最も重要な初期サインとされています。
Pallor(蒼白) – 血流障害のサイン
観察のポイント
- 皮膚の色
- 患部の皮膚が青白くなっていないか、健側と比較して観察します。
- 毛細血管再充満時間(CRT)の延長
- 指先や足先の爪を軽く圧迫し、白くなった色がピンク色に戻るまでの時間を確認します。通常は2秒以内ですが、これ以上かかる場合は血流が悪化しているサインです(CRTの延長)。
なぜ蒼白になるのか?
コンパートメント内圧の上昇により、動脈が圧迫され、末梢への血流が著しく低下します。血液が十分に供給されなくなるため、皮膚は血色を失い青白くなります。これは、組織が虚血状態に陥っていることを示す直接的な視覚的サインです。
Paresthesia(感覚障害)- 神経圧迫のサイン
観察のポイント
- 「しびれ」や「ジンジンする感じ」
- 患者に、患部の手足にしびれやピリピリ、ジンジンするような異常な感覚がないかを確認します。
- 知覚の鈍麻
- 軽く触れたり、冷たいものや温かいものを当てたりして、感覚が鈍くなっていないかを確認します。必ず健側と比較して評価することが重要です。
なぜ感覚障害が起こるのか?
感覚を伝える神経も、筋肉と共にコンパートメント内に存在します。内圧の上昇によって神経が圧迫され、虚血状態に陥ると、神経はその機能を正常に果たせなくなります。その結果として、しびれや感覚の鈍麻といった症状が出現します。感覚障害は、疼痛に次いで比較的早期に現れる重要なサインです。
Pulselessness(脈拍消失)- かなり進行した危険なサイン
観察のポイント
- 末梢動脈の拍動
- 足背動脈や後脛骨動脈など、患部より末梢側の動脈の拍動が触れるかを確認します。ドップラー聴診器を用いて確認することも有効です。
なぜ脈拍が消失するのか?
コンパートメント症候群がかなり進行し、コンパートメント内圧が動脈の血圧に打ち勝つほど高くなると、動脈は完全に閉塞してしまいます。その結果、末梢への血流が完全に途絶え、脈拍が触れなくなります。脈拍消失は、非可逆的な組織壊死が目前に迫っていることを示す、非常に危険で後期になって現れるサインです。この症状が現れる前に発見することが極めて重要です。
Paralysis(麻痺)- 最も重篤な末期症状
観察のポイント
- 運動機能
- 患者に、患部の手指や足指を自分で動かせるかどうかを確認します。「グー・パー」や足首の曲げ伸ばしなどを指示し、運動が可能か、筋力低下がないかを評価します。
なぜ麻痺が起こるのか?
運動を司る神経や筋肉自体が、長時間の虚血によって壊死に陥ってしまうと、運動機能が失われます。麻痺は、コンパートメント症候群の末期症状であり、ここまで進行すると、たとえ減圧術(筋膜切開)を行っても、機能回復は極めて困難となります。
まとめ
コンパートメント症候群の看護において最も大切なのは、「何かおかしい」という患者の訴えや、わずかな変化を見逃さないことです。