褥瘡について

褥瘡ケアの完全ガイド|原因から予防、最新治療まで

あずかん

褥瘡、いわゆる「床ずれ」は、患者さんのQOLを著しく低下させるだけでなく、時には生命を脅かす重篤な状態につながることもあります。特に、自身で体位変換が困難な患者さんの看護では、褥瘡の予防と管理は避けては通れない重要な看護課題です。
この記事では、褥瘡の基礎知識から具体的な看護のポイントまで、分かりやすく解説します。

目次

なぜ「床ずれ」はできるのか

褥瘡は、身体の一部に持続的な圧迫が加わることで、その部位の血流が滞り、皮膚やその下の組織がダメージを受けて壊死してしまう状態を指します。

私たちの身体は、動脈から酸素や栄養を受け取り、静脈やリンパ管を介して老廃物を排出しています。しかし、ベッドのマットレスや車いすの座面と骨の突起部(骨突出部)との間で皮膚が長時間圧迫されると、毛細血管が押しつぶされて血流が途絶えてしまいます。

この血流障害が一定時間以上続くと、細胞に十分な酸素や栄養が届かなくなり、組織が不可逆的なダメージを受け、壊死に至るのです。

褥瘡の主な原因

褥瘡を引き起こす主な原因は、皮膚に加わる「外的因子」です。特に以下の4つが重要とされています。

圧迫: 体重によって身体の一部が持続的に圧迫される力。褥瘡発生の最大の要因です。
ずれ力: ベッドの背上げ時などに、皮膚の表面と深部の組織が互いに逆方向に引っ張られる力。血管がねじれたり断裂したりしやすく、深部にダメージを与えます。
摩擦: シーツの上で身体を引きずるなど、皮膚の表面がこすれる力。表皮が剥がれやすくなり、褥瘡の発生を助長します。
湿潤: 発汗、失禁、創部からの滲出液などにより皮膚がふやける状態。皮膚のバリア機能を低下させ、わずかな力でも損傷しやすくなります。

これらの因子に加え、低栄養(特にタンパク質や亜鉛、ビタミンCの不足)、加齢による皮膚の脆弱化浮腫麻痺鎮静による知覚・運動機能の低下といった「内的因子」が複雑に絡み合うことで、褥瘡のリスクはさらに高まります。

褥瘡の症状:深達度による分類

褥瘡の重症度は、組織の損傷がどの深さまで及んでいるかによって分類されます。国際的に広く用いられている米国褥瘡諮問委員会(NPUAP)の分類を理解しておくことが重要です。

分類症状の特徴
ステージⅠ消退しない発赤
圧迫を取り除いても赤みが消えない状態。
皮膚の損傷はないが、褥瘡の初期サイン。
ステージⅡ部分層欠損
真皮までの組織が欠損し、水疱や浅い潰瘍が見られる。創面はピンク色で湿潤している。
ステージⅢ全層皮膚欠損
皮下脂肪組織までの欠損。創の深さは部位によって異なる。筋肉や腱、骨は見えない。
ステージⅣ全層組織欠損
筋肉、腱、骨などの支持組織が露出している状態。
感染を合併しやすく、重篤化のリスクが高い。
判定不能深部組織損傷(DTI)疑い
皮膚表面は紫色や暗赤色で、一見すると皮膚損傷がないように見えるが、深部で組織損傷が進行している可能性がある。圧迫により血疱ができることもある。
安定した壊死組織による深さ判定不能
創面が黒色や黄色の壊死組織で覆われており、その下の組織の深さが判断できない状態。

DESIGN-R®ツールを用いたアセスメント

褥瘡の治療は、創の状態を的確にアセスメントし、それに応じたケアを選択することが基本です。日本では、DESIGN-R® というツールが広く用いられています。これは、創の状態を7つの項目で点数化し、治癒の経過を客観的に評価するものです。

Depth(深さ)
Exudate(滲出液)
Size(大きさ)
Inflammation/Infection(炎症/感染)
Granulation(肉芽組織)
Necrotic tissue(壊死組織)
Pocket(ポケット)

治療の基本は、「創の湿潤環境を保つこと」 です。創の状態に応じて、適切な創傷被覆材(ドレッシング材)や外用薬を選択します。

  • 壊死組織の除去(デブリードマン)
    • 黒色・黄色の硬い壊死組織は、肉芽組織の形成を妨げるため、外科的切除、酵素製剤、ドレッシング材などを用いて除去します。
  • 感染の制御
    • 感染の兆候(発赤、腫脹、熱感、疼痛、悪臭のある滲出液)がある場合は、抗菌薬含有の外用薬や、全身的な抗菌薬投与が必要になることがあります。
  • 肉芽形成・上皮化の促進
    • 創がきれいになったら、肉芽形成や上皮化を促進する外用薬やドレッシング材を使用し、創を保護しながら治癒を促します。
  • 外科的治療
    • 保存的治療で改善しない深い褥瘡では、デブリードマンや皮弁形成術などの外科手術が検討されることもあります。

看護のポイント

褥瘡ケアにおいて最も重要なのは予防です。そして、発生してしまった場合は、悪化させずに早期治癒を目指すケアが求められます。

  1. 体圧分散ケアの実践
    • 定期的な体位変換: 2時間ごとを目安に体位変換を行いますが、患者の状態に合わせて個別の計画を立てます。
    • 体圧分散寝具の活用: 高機能エアマットレスやウレタンフォームマットレスなどを適切に選択・使用し、圧力を分散させます。
    • ポジショニング: クッションや枕を使い、骨突出部への圧集中を避けるように安楽な体位を保持します。特に仙骨部や踵部の除圧が重要です。
  2. スキンケアの徹底
    • 清潔の保持: 皮膚を清潔に保つため、洗浄剤をよく泡立て、優しく洗い、十分にすすぎます。ゴシゴシこすらないことが鉄則です。
    • 保湿: 皮膚のバリア機能を保つため、洗浄後は保湿剤を塗布し、乾燥を防ぎます。
    • 失禁管理: 失禁がある場合は、撥水効果のある皮膚保護クリームを塗布し、排泄物による刺激から皮膚を守ります。おむつはこまめに交換し、湿潤環境を避けます。
  3. 栄養管理
    • 栄養状態は創傷治癒に直結します。管理栄養士と連携し、患者の栄養状態をアセスメントします。
    • 特に、創傷治癒に必要なタンパク質、亜鉛、ビタミンC、鉄などが不足しないよう、食事内容や補助食品の活用を検討します。
  4. リスクアセスメントとチームアプローチ
    • 入院時や定期的に、ブレーデンスケールなどのリスクアセスメントツールを用いて、患者の褥瘡発生リスクを評価します。
    • 評価結果に基づき、医師、看護師、理学療法士、管理栄養士など多職種で連携し、包括的な褥瘡対策計画を立案・実践・評価することが不可欠です。
参考資料
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